§1§
「うぅ・・・・ここは・・・どこだ・・・・?」
ディックは鈍痛のする頭を振りながら周りを見渡した。
さっきまで飲んでいた酒場ではないのはわかる。何故なら、ディックの両手は座っている椅子にロープで縛られているからだ。
「何で俺は縛られているんだ・・・・?酔っ払った勢いで暴れたか・・・」
そう呟きながらディックは再び周りを見回した。部屋には蝋燭の頼りない光がともり、辺りを照らしていた。広さは船の個室ぐらいだろうか・・・ここが酒場ではない事は確かだった。
「一体ここは・・・・・」
そう、ディックが呟いたその時、部屋の扉が開き、一人の男が手下だろうか、数人の男達を率いて入ってきた。男はディックの前に立つと、ディックを見下ろした。
「どうだディック・ウォレン。目覚めは爽快かな?」
男はそう言うと、唇の端を上げるように笑った。
「・・・・・お前は・・・・」
「ほう、覚えていてもらったとは光栄だ。まあ俺は嫌でもお前の事は忘れられんがな」
「・・・・・なんでバルバリア海賊のお前がこんな所にいるんだよ、アル・セヴァス・・・」
ディックがそう言うと、その男・・・アルは、大げさに首をすくめて苦笑して見せた。しかし、目は笑っていない。
「お前からそんな言葉を聞くとはな、ディック・・・お前達が逃げ出したお陰で俺はナッソーにも居られなくなったのさ、そう・・・お前達のせいでな!」
「けっ・・・・自分の不始末を人のせいにすりゃ世話が無いな・・・結局お前さんは一人立ちできるような器じゃないって事じゃないか」
「黙れ!」
ディックの言葉にアルはそう叫ぶと、ディックの腹を思いっきり蹴った。衝撃に耐え切れず、ディックは椅子と共に床に倒れこんだ。
「ぐっ・・・・・」
「お前達が・・・・そうだ、あの時お前達がイスパニアの船の手助けさえして無ければ、俺はこんな所で燻ってなんか無かったんだよ!」
激昂したアルは、そう言いながらも何度もディックの腹を蹴った。
「ぐはぁ!!」
「船長!それ以上やったら人質の意味がなくなります!」
なおも蹴り続けようとするアルを、手下が背後から羽交い絞めにしながら言った。
「はぁ・・はぁ・・・そうだな、ここで殺すわけにはいかないからな・・・・」
「・・・・・・・人質だと・・・・どういうことだ・・・・・」
痛みを我慢しなが問いかけるディックを見下ろしながら、アルは笑う。
「お前の敬愛する船長・・・ラドリックとか言ったな、あの若造に手紙を出したのさ。お前の命が助けたければ、指定した場所に来い・・・とな。自分の船の甲板長を人質に取られては、あの船長も来ない訳にはいかんだろう」
その言葉を聞いた途端、ディックは大きな声で笑い始めた。
「何がおかしい!」
「残念だったなアルさんよ!俺はもうあの船長の船の甲板長じゃないんだよ!」
「何だって!?嘘を言ってもすぐにばれるんだぞ!」
「嘘じゃねぇさ、今頃あの船の甲板長はニーナって言う女が務めているはずさ。俺はもうお払い箱なんだよ、あんたもご苦労なこった!来もしない奴を待つのはやめて、さっさと俺を始末したほうが手間がかからないぜ!」
ディックの言葉にアルは呆然としていたが、すぐに気を取り直し言葉を続けた。
「まあいい、とりあえず約束の日までは生かしといてやる。来ればそれでよし、来なければその時に改めてお前を始末してやる。それまでせいぜい死の恐怖に怯えるんだな!」
アルはそう言うと、手下を引き連れて部屋を出た。そして扉が閉まると、鍵をかける音が聞こえ、辺りに静寂が戻った。
「・・・・・・来るものかよ・・・・・」
ディックは血の混じった唾を床に吐くと、そう呟いた・・・・・
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