2006年05月29日

アガメムノンの仮面(前編)

「てな訳で・・・・俺達はあんた達と似たような依頼を受けてる冒険者をそこまで案内するんだが・・・・目的地に着くとそいつらは決まって俺達に賃金を渡して帰るように言うんだ・・・まあ、俺達もそこに居る理由が無いから貰うもん貰ったら帰るんだが・・・・」


その船乗りの話に、レヴィローズは思わず息をのんだ。ここはアテネの酒場・・・レヴィローズはラドリックやSanative=Vixenと共に、ホメロスが書いた叙事詩イアリスが物語ではなく史実であるという確証を探すべく、トロイ戦争におけるギリシャ側の総大将であるアガメムノンについての情報を集めるためにアテネに来ていたのだった。

「そ・・・・それで、貴方の案内した冒険者の方々は?」

レヴィローズは恐る恐る船乗りに続きを聞いた。

「さぁなぁ・・・・街に帰ってきたって噂も聞かないし・・・・もしかしたら俺達の案内した所に真新しい死体となって山積みになってるのかもしれないぜ?あんた達も気をつけたほうがいい・・・・」

「お兄様・・・Sanativeさん・・・・まさか私たちも騙されてるんじゃ・・・・」

レヴィローズはラドリックとSanativeの方を向き、不安げな表情で二人の顔を見た。ここに来る前に寄ったマルセイユの冒険者ギルドのギルドマスターが、同じような依頼を受けた冒険者達が一人も報告に来ないと訝しがっていたのを思い出したのだ。

「う〜ん・・・その可能性も無いとは言えませんが・・・・取りあえず商会長と私が居ればレヴィさんの安全は確保できると思います。どうです?商会長?」

ラドリックの言葉にバヌースに身を包んだSanativeは静かに頷いた。

「うむ、大丈夫だろう・・・・まあ、今の俺はしがない冒険者だから、荒事は英国紳士たるラドリック卿にお任せするが?」

「商会長・・・・勘弁してください・・・・」

「うふふ」

ラドリック達のやり取りを聞いて、レヴィローズは心の中の不安が無くなっていくのを感じた。自然と笑みがこぼれる。

「どうやらレヴィ嬢も安心したようだし、ラドリック卿、そろそろ行くとするか」

「了解です商会長」

Sanativeとラドリックが席を立つ、そして二人は酒場の出口に向かった。

「ありがとう船乗りさん、これはお礼よ」

レヴィローズは船乗りの手に金貨を握らせると、ぺこりと頭を下げて酒場を出て行くラドリック達を追った。船乗りは、情報料にしては多すぎる金貨を握り締めながら酒場を出て行くレヴィローズに視線を送った。


(お嬢さん・・・・あんた達の無事を祈ってるぜ・・・・)




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posted by ラドリック at 23:39| Comment(6) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月07日

一夜の夢


「お兄ちゃん・・・・まだ見つからないの?」

夕日が大地を紅く染める・・・・額に浮いた汗をハンカチで拭きながら、ソフィアはラドリックに言った。

「あのなぁソフィア・・・・遺跡や財宝探しって物は、美術品なんかと違って、ある所がちゃんとわかってないものが多いんだ。だから探索には時間がかかるんだよ」

もう何度目だろう、ラドリックは探索の手を止めてソフィアに言った。ラドリックはナポリのギルドマスターから、ビザンツ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世を支えたという皇妃テオドラについて調べるという依頼を受けて、エドやソフィア、ディック達と共に、サロニカの奥地に来ていたのだった。

「でももう二日も同じ場所を行ったり来たりしてるよ?大体の場所が分かってるんだったらもう見つかってもいいんじゃない?私もう疲れちゃったよ」

ソフィアが近くの木の根っこに座り込みながらそう言った。ラドリックは今回も少人数で行くつもりだったのだが、ソフィアがついて来ると言い張った為、万が一の事も考えてエドやディックも連れてきたのだった。

「確かにソフィア嬢の言うとおりですな。もう日も落ちてきたことですし、今日はここで野営しては如何でしょうか?」

通訳として同行していたミハイルがそう言った。

「・・・・そうだな、今日はここで野営しよう。みんな、野営の用意をしてくれ!」

ラドリックがそう言うと、全員が野営の準備に取り掛かった。ラドリックは木の根っこに座り込んだソフィアの元へ行くと横に座った。

「どうだソフィア、冒険も結構大変だろ?このままではあと何日かかるか分からない。どうだ?ディックを護衛につけるから先に帰らないか?」

「冗談じゃないわ、そうやって私を追っ払おうとしてもそうはいかないんだからねお兄ちゃん」

ソフィアはそのラドリックの言葉に首を振りながらソフィアは言った。

「そんなつもりは無いがな・・・・しかし何でついてこようと思ったんだ?」

「それは・・・・ミハイルさんに聞いたの。テオドラって人は平民の出身だったって」

ソフィアはラドリックの顔を見ながら言葉を続けた。

「平民の出で皇帝の奥さんになれた人ってどんな人だったのかなって思って・・・・ちょっと興味がわいたから」

「なるほど・・・・確かに皇妃テオドラは平民出身だったらしい。昔はサーカス団で舞姫をしていて、その舞は右に出るものがいなかったそうだ。ユスティニアヌス1世はテオドラに一目惚れして、当時の法律を改正してまでテオドラを皇妃に迎えたらしい」

「そうなんだ・・・・・」

ラドリックの説明を聞きながら、ソフィアは考えていた。法律を改正してまで妻に迎えたい女性とはどんな人だったのだろう・・・・・

「船長、ソフィア嬢ちゃん、野営の準備ができましたぜ!」

野営の準備を整えたエドがラドリック達に手招きをしていた。ラドリックとソフィアは立ち上がると、エドの方に歩いていった。




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posted by ラドリック at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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