2006年08月28日

汚名

§1§




「貴官は確か・・・・・あの時Sanative=Vixen提督と一緒に居た・・・・」


聖ヨハネ騎士団の団長であるリラダンは、彼の前に立っている若者を見てそう呟いた。

「お久しぶりです団長。その際はご迷惑をおかけしました・・・・」

その若者・・・・ラドリックはそう言うと、リラダンに頭を下げた。

「いや、気にせんでくれ。貴官はよくやった。だが、あの時はSanative提督に助けられたな・・・・」

「ええ・・・・」

リラダンの言葉にラドリックは頷いた。あの時・・・・そう、オスマン艦隊を討伐すべく、リラダンから依頼を受けたラドリックはSanativeに応援を頼み、勇躍ロードス島沖に向かったのだが、結果は惨敗・・・最終的には疲れきったラドリック達をカンディアに残してSanativeが単独出撃し、オスマン艦隊を撃破したのだった。


「で・・・・今日は何の用かな?」

物思いにふけるラドリックにリラダンは声をかけた。

「失礼しました。海事ギルドの方でオスマン艦隊を討伐する者を求めていると聞きましたので参上した次第です」

「・・・・確かにギルドの方には適任な者が居ればこちらに寄越すように依頼をしておいたが・・・・・貴官をその任に当てるわけにはいかんな」

ラドリックの言葉にリラダンは答えた。沈黙するラドリックにリラダンは更に言葉を続ける。

「先ごろのオスマン艦隊との大海戦は知っておるな?」

「はい・・・」

「あの時も各国から選りすぐりの航海者達が集まり、何とかオスマン艦隊の南下を防いだ。しかし、オスマン艦隊は戦力を蓄え、再度の侵攻を狙っておる・・・・・ラドリックよ、貴官は一度オスマン艦隊に完膚なきまでに叩きのめされている・・・・オスマン艦隊を討伐するには、Sanative提督のような熟練の軍人でなければならん。だからこの任に貴官を当てるわけにはいかんのだ」

「リラダン団長」

ラドリックは俯いていた頤を上げると、まっすぐリラダンを見た。鋭い視線がリラダンを射抜く。

(ほう・・・・・いい目をしておるな・・・・・あのときとは違う)

リラダンはラドリックの視線を受け止めながらそう思った。そして、形の良い口ひげをしごきながらラドリックに問いかける。

「なにかね?」

「私にもう一度機会を与えてください。汚名を雪ぐ機会を・・・・」

「しかし・・・・・」

「ヨハネ騎士団の名を汚すような事は致しません。ですから是非とも・・・・」

「・・・・・・・・わかった、貴官に討伐を任せよう」

「ありがとうございますリラダン団長。このラドリック・ガーランド、一命に代えましてもオスマン艦隊を」

「だめだ」

「・・・・は?」

「命に代えてもなどと言うものではない、無理はするな、そして・・・必ず帰って来るのだ」

「・・・・・承知致しました」

ラドリックはリラダンに敬礼すると、リラダンの執務室をあとにした。




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2006年08月16日

甲板長の憂鬱(ディック)


「左舷1番から8番まで装填完了しました!」

「よし、目標左舷ピンネース級、距離280・・・・ファイエル!」


エルウッドの号令と共に、ファルコン砲に装填された砲弾が、カテガット海賊の船に放物線を描いて飛んでいく・・・俺はそれを目で追いながら、ため息をついた。

「暇だなぁ・・・・」

「兄貴・・・何言ってるんですか、そんなに暇ならちょっとは資材の運搬とか手伝ってくださいよ!」

俺の呟きが聞こえたのか、後ろでちょこまかと補修用資材の運搬をしていたロイの野郎が、俺に向かって言ってきた。

「あのなぁロイ・・・・俺は資材を運ぶ為に甲板長やってるんじゃねぇんだよ」

「・・・・・兄貴、甲板長って何の仕事するのか知ってます?」

俺の言葉に半ば呆れながらロイが聞いてくる。

「そりゃお前、甲板長って言ったら、白兵戦の時にその指揮を取る・・・」

「そりゃ、それも主な仕事ですがね・・・・甲板長ってのは、白兵戦以外にも水夫を統率して、船上の諸作業指揮をするのが甲板長ですぜ?」

ボーっとしている俺に構わず、ロイは更に言葉を続ける。

「だから、白兵戦が無い時には船の補修用の資材を運んだり、砲弾を運んだり・・・・」

「お前が指揮すりゃいいじゃないか、俺はまっぴらごめんだぜ・・・・なんかあれば呼んでくれ、俺は下に下りてる」

「あ〜に〜き〜・・・・」

困った顔をするロイを尻目に、俺は手をひらひらと振って見せると、中甲板に下りる階段に向かった。




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posted by ラドリック at 20:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 航海士達の日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月06日

再び戦いの海へ・・・・

「ラドリック・ガーランド・・・・よく貢献してくれましたね」

荘厳な空気が流れる謁見の間に、女王の声が響いた。女王の声が大きいのではない。謁見の間に漂う厳粛な雰囲気が他の者に物音を立てさせていないのだ。

「ラドリックよ、女王陛下はお前に更なる爵位を授与されるとの仰せだ。謹んで受けるように」

女王の隣に立つサセックス伯がラドリックにそう言った。

「ありがたき幸せ。このラドリック、イングランドの為に更に尽くす所存です」

ラドリックは緋色の毛氈の上に跪いて頭を垂れたままそう答えた。
ヨーロッパとインドを往復し、宝石輸送で瞬く間に資金を稼いだラドリックは、その大半をイングランドの同盟港に投資した。その功績により、今回の爵位授与となったのである。


「時にラドリックよ」

再び謁見の間に女王声が響く。

「そなたをこの謁見の間に呼んだのにはもう一つ理由があります」

女王はそう言うと、サセックスに視線を投げかけた。女王の視線を受けたサセックスはラドリックの方に向き直ると、手に持っていた紙を開き、言い放った。

「イングランド海軍予備役士官ラドリック・ガーランドに命ずる。女王陛下の勅命である。直ちに現役復帰し、軍務に付け!」





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posted by ラドリック at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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