2007年08月24日

花酔いの石(前編)

(注意:今回はネタバレを含んでいます)


§1§


「ふう・・・今帰ったぞ」

タラップを上がってきたラドリックがそう言うと、水夫達に指示を与えていたエドがラドリックの方を向いた。

「お早いお帰りですね船長」

「ああ、ここには用事もあまり無いしな・・・酒場に行くのも癪だし・・・」

エドの問いかけにラドリックは答えながら眼下に広がるエメラルドグリーンの海を見た。チュニスを出航したラドリック達は、一路カリブの開拓地グランドケイマンを目指し、開拓地に物資を納入したあと、グランドケイマンの南西にあるポルトベロに寄港していた。

「船長、お帰りなさい」

その声にラドリックが振り向くと、そこにはチャドリに身を包んだサラの姿があった。サラは手にした書類をラドリックに手渡した。

「物資の搬入は大方終了しました。いつでもヨーロッパに戻れます」

「ありがとうございますサラさん。しかし・・・・・」

「なんでしょう?」

「いや・・・暑くないですか?」

ラドリックはシャツの胸元に風を送り込みながら言った。

「ああ、私はいつも砂漠の中で生活していましたから。確かにこちらの暑さは砂漠の比ではないとは思いますけど・・・」

サラはそう言うと小首を傾げた。

「そうですか・・・・そういえば、ソフィアは何をしてるんですか?サラさん一人に仕事を押し付けて・・・困った奴だ」

「え?船長はソフィアさんと会ってないんですか?」

「ええ、会っていませんが・・・?」

ラドリックの言葉にサラは不思議そうな顔をする。

「じゃあすれ違いになったのでしょうか・・・?」

「何かあったんですか?」

「いえ、先ほど船にこの街の冒険者ギルドの方が訪ねて来られまして、ソフィアさんがその方の伝言を船長に伝える為に酒場に船長を探しに・・・」

「何だって!!」

サラの言葉にラドリックが大声を上げる。びっくりするサラの両肩をつかんだラドリックは、サラを揺さぶった。

「ソフィアがこの街の酒場に行ったと言うんですか!?」

「え・ええ・・・・」

サラの返事を聞くと、ラドリックは慌ててタラップを降りていった。その姿を呆然と見送るサラ・・・・

「あの・・・・エドさん・・・・」

「なんです?」

「私・・・・何か大変な事を言ったんでしょうか・・・?」

「いやいや、サラさんは何も悪くないですぜ。ただ、この酒場には色々ありましてね」

不安げな表情で問いかけるサラにエドは笑って見せるとそう言った。

「色々・・・・ですか」

エドの言葉にサラは小首を傾げる。

「そうです、ちなみに・・・・」

「ちなみに・・・?」

「サラさんは「世の中には自分にそっくりな人間が三人はいる」って話を信じやすか?」

エドはサラにそう言うと、豪快に笑った・・・・



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posted by ラドリック at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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