2008年11月09日

因縁の結末 §前編§

§1§



「うぅ・・・・ここは・・・どこだ・・・・?」

ディックは鈍痛のする頭を振りながら周りを見渡した。
さっきまで飲んでいた酒場ではないのはわかる。何故なら、ディックの両手は座っている椅子にロープで縛られているからだ。

「何で俺は縛られているんだ・・・・?酔っ払った勢いで暴れたか・・・」

そう呟きながらディックは再び周りを見回した。部屋には蝋燭の頼りない光がともり、辺りを照らしていた。広さは船の個室ぐらいだろうか・・・ここが酒場ではない事は確かだった。

「一体ここは・・・・・」

そう、ディックが呟いたその時、部屋の扉が開き、一人の男が手下だろうか、数人の男達を率いて入ってきた。男はディックの前に立つと、ディックを見下ろした。

「どうだディック・ウォレン。目覚めは爽快かな?」

男はそう言うと、唇の端を上げるように笑った。

「・・・・・お前は・・・・」

「ほう、覚えていてもらったとは光栄だ。まあ俺は嫌でもお前の事は忘れられんがな」

「・・・・・なんでバルバリア海賊のお前がこんな所にいるんだよ、アル・セヴァス・・・」

ディックがそう言うと、その男・・・アルは、大げさに首をすくめて苦笑して見せた。しかし、目は笑っていない。

「お前からそんな言葉を聞くとはな、ディック・・・お前達が逃げ出したお陰で俺はナッソーにも居られなくなったのさ、そう・・・お前達のせいでな!」

「けっ・・・・自分の不始末を人のせいにすりゃ世話が無いな・・・結局お前さんは一人立ちできるような器じゃないって事じゃないか」

「黙れ!」

ディックの言葉にアルはそう叫ぶと、ディックの腹を思いっきり蹴った。衝撃に耐え切れず、ディックは椅子と共に床に倒れこんだ。

「ぐっ・・・・・」

「お前達が・・・・そうだ、あの時お前達がイスパニアの船の手助けさえして無ければ、俺はこんな所で燻ってなんか無かったんだよ!」

激昂したアルは、そう言いながらも何度もディックの腹を蹴った。

「ぐはぁ!!」

「船長!それ以上やったら人質の意味がなくなります!」

なおも蹴り続けようとするアルを、手下が背後から羽交い絞めにしながら言った。

「はぁ・・はぁ・・・そうだな、ここで殺すわけにはいかないからな・・・・」

「・・・・・・・人質だと・・・・どういうことだ・・・・・」

痛みを我慢しなが問いかけるディックを見下ろしながら、アルは笑う。

「お前の敬愛する船長・・・ラドリックとか言ったな、あの若造に手紙を出したのさ。お前の命が助けたければ、指定した場所に来い・・・とな。自分の船の甲板長を人質に取られては、あの船長も来ない訳にはいかんだろう」

その言葉を聞いた途端、ディックは大きな声で笑い始めた。

「何がおかしい!」

「残念だったなアルさんよ!俺はもうあの船長の船の甲板長じゃないんだよ!」

「何だって!?嘘を言ってもすぐにばれるんだぞ!」

「嘘じゃねぇさ、今頃あの船の甲板長はニーナって言う女が務めているはずさ。俺はもうお払い箱なんだよ、あんたもご苦労なこった!来もしない奴を待つのはやめて、さっさと俺を始末したほうが手間がかからないぜ!」

ディックの言葉にアルは呆然としていたが、すぐに気を取り直し言葉を続けた。

「まあいい、とりあえず約束の日までは生かしといてやる。来ればそれでよし、来なければその時に改めてお前を始末してやる。それまでせいぜい死の恐怖に怯えるんだな!」

アルはそう言うと、手下を引き連れて部屋を出た。そして扉が閉まると、鍵をかける音が聞こえ、辺りに静寂が戻った。

「・・・・・・来るものかよ・・・・・」

ディックは血の混じった唾を床に吐くと、そう呟いた・・・・・




§3§



「船長!兄貴は無事なんですか!」

ロイは厳しい表情で手紙を読むラドリックに向かって叫んだ。アルから送られてきた手紙がBand of lightに届けれると、ラドリックはエドやニーナ、ロイを船長室に呼んだのだった。

「今の所は無事らしい。ディックを助けたかったら、俺にコペンハーゲンの沖まで来るようにと書いてある・・・」

ラドリックはそう言うと、手紙をテーブルの上に置いた。

「しかし・・・そのアルってのは何者なんですかい?」

「ああ、それはな・・・」

ラドリックは、ナッソーでの一部始終をエド達に説明した。

「なるほど・・・・Sora船長の手助けをした時のバルバリア海賊の船長が・・・・」

ラドリックの話を聞いて、エドが呟いた。

「そいつの話ならカリブに居た時に聞いています。ナッソーを偵察に来たイングランドの軍人を見つけながらも取り逃がしたあげく、ナッソーの艦隊をと共にその船を追撃に出て、逆に待ち伏せていた英国私掠艦隊のウィリアム・キッドに多数の船を沈められてナッソーを追い出されたとか・・・あの時のイングランド軍人とは船長の事だったんですか」

「そうだ、しかし・・・あの時助けてくれた艦隊が、まさかあの「キャプテン・キッド」だったとはな・・・」

ニーナの言葉にラドリックは頷くと、そう呟いた。

「しかし・・・どうしやす?いくらディックの為とはいえ、船長一人で行くのは危険じゃないですかい?こりゃ、どう考えたって・・・・」

「罠ですね」

エドの言葉にニーナが答える。

「私がその海賊の立場なら間違いなく罠にかけます。恐らく船長が一人で行けば帰っては来れないでしょう。もし、船長が来なかったとしても、甲板長を血祭りにあげれば溜飲は下がるでしょうしね。船長が完全武装で来れば逃げればいいだけですし・・・」

ニーナはそう言うと、ラドリックの方を見る。

「どうします船長?冷たい言い様ですが、甲板長・・・いや、ディックはもうこの船の甲板長ではありません。一旦船を降りた者の為に、船長の命を危険に晒す訳には・・・」

「ちょっと待ってください!」

ニーナの言葉を遮る様にロイが叫んだ。

「船長!兄貴を見殺しにしないでください!確かに兄貴は船長に対して失礼なことを言ったかもしれない・・・でも・・・でも・・・!兄貴は今までずっと船長と一緒に戦ってきたじゃないですか!ケープ沖でも・・キリングリューとの戦いの時も・・・カリブ海でも!!」

ロイはそう言うと、前に立つニーナを押しのけるようにしてラドリックの前に出た。

「お願いです船長!どうか・・・どうか兄貴を助けてください・・・!」

ロイはそう言うとラドリックに頭を下げた。その頬には涙が流れていた。

「ロイ」

ラドリックはロイの名を呼ぶと、その肩に手を置いた。

「俺はディックを首にしたつもりは無いぞ。確かにあの時は勢いであんな事を言ったがな・・・」

「・・・それじゃあ船長!!」

「ああ、ディックを助けに行くぞ」

ラドリックはそう言うと、エドの方を向いた。

「エド、すぐに出港準備を整えてくれ」

「了解しましたが・・・Band of lightで行くとニーナが言った通り、相手が逃げ出しませんかね?そうなるとディックの命も・・・」

「確かにな・・・」

エドの言葉にラドリックは頷くと、言葉を続けた。

「だから俺はBand of lightじゃなくBlue galeで行く。Band of lightの指揮はエド、お前が取ってリューベックを目指してくれ。勿論、Band of lightとはわからないように擬装をしてな」

Blue galeとは、ラドリックが地中海を中心に冒険をしていた時に使っていたダウというラテンセイルの小型艦である。

「俺はロイやニーナ、切り込み隊から精鋭を選りすぐって、Blue galeでコペンハーゲンに向かう。それで油断をするかどうかわからないが・・・」

「何か策があるんですかい?」

「ああ・・・ロイ、悪いがギムを呼んできてくれないか?」

「わかりました!」

ラドリックの言葉にロイが弾かれた様に船長室を出る。それを見送りながら、ラドリックはニーナに言った。

「ニーナ、ディックは俺の大切な甲板長であり戦友だ。君の意見は正しいが、俺にはディックを見捨てることはできない・・・例え、自分の身が危険に晒されようともな」

ラドリックは更に言葉を続ける。

「今考えている策が成功したとしても、ディックを救出して無事にロンドンに帰れる保証は無い。俺は君に手伝ってもらいたいが・・・どうだろう?手伝ってもらえるだろうか?」

ラドリックはそう言うと、ニーナをみつめた。

「ラドリック船長、私は既にこの船の航海士であり副甲板長です。船長が仰るのであれば、例え地獄でもお供します」

「すまないな・・・・ありがとう・・・」

ラドリックはそう言うと、ニーナに頭を下げた。

(なるほど・・・パブロのおやっさんが言ってた通りの人だね・・・)

ニーナはそう思いながら、自分に頭を下げるラドリックを見ていた。

(この人についていけば、少なくとも退屈しなくてすみそうだ)

「船長!ギムさんを呼んできました!」

その時、ロイがギムの手を引っ張りながら船長室に飛び込んできた。ギムは状況が飲み込めていないのか、目を白黒させながら船長室に入ってくる。

「よし、それでは今から作戦について説明するぞ。みんな、こっちに集まってくれ」

ラドリックはそう言うと、説明をはじめた・・・・


It will continue next time.
posted by ラドリック at 22:00| Comment(2) | TrackBack(1) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
続きは...どうなるの?
Posted by 真名 at 2011年02月12日 23:23
>真名さん

二年半ぶりになってしまいましたが、続きをアップしたので、よろしければ読んでくださいね^^
Posted by ラドリック(管理人) at 2011年06月03日 00:09
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Tracked: 2016-11-29 20:11
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