2007年02月11日

死闘 §中編§

§1§



「・・・・・エド・・・・・敵艦は・・・・・・」

「今ので全部でさ・・・・・」

「そうか・・・こちらの損害は・・・・」

「右舷の大砲は全て使用不可・・・損傷箇所は応急処置をしてますが・・・これ以上は無理ですぜ・・・それと・・・」

「・・・・それと・・・?」

「水夫の死亡30・・・・負傷者42でさ・・・・」

「くっ・・・・・・・代償は高くついたな・・・・・・」

ラドリックはそう呟くと、炎に焦げたマストを拳で殴った。ラドリックの作戦は功を奏し、一隻だけと甘く見たイスパニア艦隊は、キングリューの旗艦と護衛艦を残し全滅した。しかし、Band of lightの被害も大きく、船体には各所に被弾した穴が開き、延焼のあとも痛々しかった。

「それと・・・・ディックですが・・・・」

「まさか・・・・死んだなんていうんじゃないだろうな!」

エドの言葉にラドリックが振り返る・・・・ディックは敵の白兵戦の最中に負傷し、船医であるカークが治療を行なっていたのだった。

「船長、あいつは殺したって死ぬ奴じゃありませんぜ。ただ・・・当分は療養が必要らしいんでさ」

「そうか・・・・・」

その言葉にラドリックは周りを見渡した。船自体の被害も大きいが、人的被害も大きかった。ある者は頭に包帯を巻き、またある者は腕を吊っている。怪我の無い者も疲労の色が濃く、甲板に座り込んでいるものも多数いた。


「あとは・・・・・・」

そう、ラドリックが呟いたその時、ロイがラドリックとエドの元に駆け寄ってきた。

「船長!おやっさん!大変です!」

「ロイ!どうしたってんだ!」

「あれを・・・・あれを見てください!」

ロイが指差した方にラドリックとエドの視線が向く・・・その目に映ったのはキングリューの旗艦である重ガレオンと撃ち合っているライザの船の姿だった。

「どういうことだ!あとの船はどうしたんだ!・・・・・まさか!!」

「迎撃艦隊の殆どは護衛艦と刺し違えたようです!生き残った艦も戦える状態では無いようで・・・・ライザ船長が生き残った艦を逃がす為に時間を稼いでいるようです!」

確かにライザの船と重ガレオンの周りには護衛艦と迎撃艦隊の船の物であろう残骸が多数浮いていた。

「くそっ!!このままでは・・・・・・」

ラドリックは拳を握り締めながらライザの船の方を見た。ライザは砲撃を加えながらも、重ガレオンとの距離を詰めていった。

「馬鹿な!・・・・・・ライザ・・・・死ぬ気か!!」

舷側から身を乗り出すようにして叫ぶラドリック・・・・その瞬間、ライザの船とキングリューの重ガレオンは接舷した。船体と船体のぶつかる音が、遠くからでもはっきりと聞こえた。

「このままライザをやらせるわけにはいかない!レイモンド!敵の重ガレオンにBand of lightをぶつけろ!強行接舷させる!エドは斬り込み隊の連中で無事な奴を集めてくれ!」

「アイ・サー!」

手負いの獣が最後の咆哮を上げるように、船体を軋ませながら重ガレオンに向かって船首を向けるBand of light・・・・・ラドリックはその船首に立ちながら、徐々に迫る重ガレオンを見つめた。


(ライザ・・・・・無事でいてくれよ・・・・・・)



§2§



「ライザ!!どこだ!」

切りかかってきたイスパニア軍士官の斬撃を避けながらラドリックは叫んだ。キングリューの重ガレオンに船首から突っ込むような形で強行接舷したラドリックは、エドと共に残る斬り込み隊を指揮して重ガレオンに乗り込んでいた。

「ライザ!何処にいる!返事をしてくれ!」

なおも切りかかるイスパニア士官の胴を、手にした宝剣フラガラッハでなぎ払いながら、ラドリックは歩を進めた。船尾に向かうラドリックに次々とイスパニアの精鋭が立ち塞がる・・・・その数はおよそ15・・・

「ここからは通さんぞ・・・・イスパニア艦隊に逆らった事を後悔させてくれる!」

恐らくこの船の甲板長なのだろう、コルセアコートを着た士官がラドリックの前に立ち塞がる・・・・それに応じようとラドリックが身体を動かしかけたその時、ラドリックの左右にエドとロイが進み出た。

「船長!!ここはあっし達に任せて、船長はライザ船長を!」

「そうです!俺だって曲がりなりにも副甲板長です。兄貴の代わりは立派に努めてみせます!」

エドとロイはそう言うと、部下の斬り込み隊と共にイスパニアの精鋭に挑みかかった。たちまち辺りに怒号が巻き起こる。


「エド・・・ロイ・・・・すまない!」

ラドリックはそう叫ぶと、船尾に向かって走り出した。

「待て!これ以上行かせる訳には!!」

「おっと、船長の邪魔はさせねぇぜ!」

ラドリックを追おうとする敵の甲板長の前にエドが立ち塞がる。エドは腰のカトラスを抜くと、肩に背負った。

「老いぼれが・・・・まずはお前から始末してくれる!」

全身から怒気を発し、甲板長も腰のサーベルを抜いた。そして二人は同時に剣を振るった・・・・・



§3§



「キングリュー!出てきなさい!」

敵艦の船尾まで来たライザは、敵の士官と切り結びながら叫んだ。しかし、キングリューの姿は無く、あるのは目の前の敵の斬撃だった。相手の強烈な斬撃に防戦一方のライザ・・・・

「きゃあ!!」

相手の斬撃を受けた瞬間、バランスを崩して甲板に膝をつくライザ・・・・敵の士官はライザを見下ろしながら、剣を振り上げた。

「死ねぇ!!女!!」

「!!!」

思わず身をすくませるライザ・・・・しかし、ライザを狙った斬撃は、一振りの剣に防がれた・・・ラドリックの剣によって。

「ラドリック!!」

「ええい!邪魔をするな!!」

新たな敵に驚いた敵の士官は、目標をラドリックに変えて剣を振るった。しかし、その斬撃をかわしたラドリックは、手にしたフラガラッハで相手の喉を切り裂いた。敵の士官は目を見開き、声にならない声を上げながら、自分の流した血の海に沈んだ。


「どうやら間に合ったようだな・・・大丈夫かライザ?」

甲板に膝をついているライザに手を貸すラドリック。その手を掴んでライザは立ち上がった。

「ええ・・・ありがとうラドリック」

「なんでこんな無茶な真似をしたんだ・・・」

「私は女王陛下に海軍士官として迎撃艦隊の指揮を取るように命じられたわ・・・だから私は貴方の作戦を採用して、他の艦と共にキングリューの旗艦を襲った・・・しかし、貴方がいくら奮戦しても護衛艦に守られたキングリューを倒すことはできなかった・・・・だから、私は自分で決着をつけるために、この船に乗り込んだのよ・・・・・」

「しかし、ライザの船の斬り込み隊の戦力では!」

「それはわかっているわ・・・でも・・・・傷つき、ボロボロになって戦えなくなった僚艦を戦域から離脱させるにはこれしかなかったのよ・・・・そして、私は僚艦を逃がす為に命を捨てるつもりだった・・・・」

ライザはそういうと、ラドリックを見た。

「でも・・・・貴方が来てくれた・・・・助かったわラドリック・・・・・」

「ライザ・・・・・」

ライザが更に何かを言おうとしたその時、あたりに笑いが響き渡った。その声に辺りを見回すラドリックとライザ・・・・そして、二人の視線は一箇所に集まった・・・・そう、二人が捜し求めていたあの男の顔に・・・


「大層な茶番を見せてもらった。流石はイングランドの女士官殿は演劇にも造詣が深いと見える」

その男・・・・キングリューは、船尾楼の上から二人を見下ろしながらそう言った。その顔には嘲笑が浮かんでいた。

「キングリュー!やっと見つけたわ!貴方をイングランド女王陛下の名の下に逮捕します!」

ライザはそう言うと、手にしていたサーベルをキングリューにつきつけた。

「フフフフフ・・・・・ハ〜ハッハッハ!相変わらず憎たらしいガキだ!お前は今の状況がわかっているのか?」

「何ですって?」

キングリューが手を上げると、キングリューの周りに数名の兵が現れた。その兵達はそれぞれ手にマスケット銃を持っていた。その銃口がラドリックとライザを狙う・・・


「と、言う訳だ。お前たちにはここで死んでもらう。我が計画を邪魔した代償としては役不足だがな」

「何を勝手な事を!」

マスケット兵の銃口にも恐れを見せず、なおもキングリューに向かっていこうとするライザの前にラドリックは進み出ると、ライザを銃口から守るように立った。そのラドリックの顔を見たキングリューの表情が急変する。

「お前は・・・・・あの時の小僧!あの時にお前さえ始末していれば、俺は今頃イングランドを内部から崩壊させてやれたものを・・・・!!」

「それは残念だったなキングリュー!しかし、ここでお前との決着をつける!おとなしく女王陛下の裁定を受けろ!」

「くっ!・・・・どいつもこいつも俺を馬鹿にしおって・・・・・マスケット隊!あの二人を蜂の巣にしろ!!」

キングリューの声にマスケット兵達はその照準をラドリックとライザに合わせる・・・ラドリックはライザを庇うように両手を広げると、目を瞑った。

(・・・・ここまでか・・・・・!!)

「撃て!!」

キングリューの号令と共にマスケット兵達は引き金を引いた・・・・轟音が響き・・・・そして静寂が船上を支配した・・・・・



§4§



しかし・・・いくら待っても銃弾はラドリックの身体を貫かなかった。ラドリックが閉じた瞼を開くと、その前には見慣れた背中・・・・そう、エドの背中があった。

「エド!!」

「・・・無事・・・ですかい・・・・船長・・・・・」

ラドリックの声にエドはゆっくり振り向くと、ラドリックに笑いかけた。しかし、すぐにバランスを崩すと、甲板に仰向けに倒れこんだ。そして、その体の前面には、無数の弾痕があった・・・・


「エド!!」

倒れこんだエドの横に駆け寄るラドリック・・・・

「エド!!何故!!」

「イスパニアの・・・・海兵隊を・・・始末したあと・・・・船長を探してこっちに来たら・・・・まさに撃たれる寸前だったんでさ・・・・それを見たら・・・・体が勝手に動いてやした・・・・」

喘ぎならも言葉を紡ぐエド・・・・・ラドリックはエドに取りすがった。

「気をしっかり持つんだエド!一緒にロンドンに帰ると約束しただろ!」

「ええ・・・そうでしたね・・・・だが・・・・今はちょっと・・・・無理そうでさ・・・・」

「何を弱気な!」

「ぼっちゃんを守るという・・・・先代との・・・・・約束も果たせました・・・・・・ぼっちゃん・・・・どうか・・・・」

そう言うと・・・エドは目を閉じた・・・・

「エド・・・・?嘘だろ・・・・・エド・・・・・・」

エドの体を揺するラドリック・・・しかし、エドは喋らない・・・・


「エド・・・・・・・エドォ!!!」

物言わぬエドを抱きしめながら天を仰ぐラドリック・・・・その叫びは船上にむなしくこだました・・・・・・


It will continue next time.
posted by ラドリック at 23:24| Comment(5) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
。・゜・(ノД`)・゜・。<エドさんがー!
人は死亡フラグには抗えない運命なのか…。
Posted by Manon at 2007年02月12日 00:30
相変わらずいい話を書いてますねー!
毎回楽しませていただいてます!^^
Posted by J at 2007年02月13日 10:31
>Manonさん

見事に死亡フラグが立ってしまいました・・・
が、まだ中編です、後編をお楽しみに!(ぇ

>Jさん

ありがとうございます、その一言が次を書く起
爆剤になります^^

Jさんが完全復帰の時には、是非とも出演を(
ry
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年02月14日 21:39
いつもながらの大作で、執筆にたいへんな
時間と気力を要すると思いますが、
どうぞ無理のないよう頑張ってくださいね。
いち読者として応援しています。

っていうか、エドーーーーーーーーーー!
・゚・(ノД`)・゚・。
Posted by Julian at 2007年02月16日 00:31
>Julian卿

応援ありがとうございます。とりあえず、後編も
書き終えたので見てくださいw
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年02月17日 20:33
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