2007年02月17日

死闘 §後編§

§1§


「エド・・・・・嘘だろ・・・・・エドォ!!!」

硝煙と静寂が包む船上で、ラドリックは物言わぬエドを抱きしめ叫んだ。熱い涙がとめどもなく流れ出る・・・・・

「ふん・・・・自分の仕える船長を我が身を挺して護った悲劇の副官・・・・と、言った所か・・・・無駄な事を」

「・・・・・・」

「折角副官が護ったお前達の命も、あともう少しで消える・・・・結局はほんの数分生き延びただけだったな・・・・フフフフフ・・・・ハーハッハッハ!」

「キングリュー!貴方という男は!」

エドを抱きしめたままのラドリックとその横に居るライザを見ながら、キングリューは嘲笑った。その言葉に激昂するライザ・・・・その時、ライザの肩をラドリックの手が掴んだ。

「・・・・・ライザ・・・・エドを頼む・・・・」

「・・・・ラドリック・・・・?」

振り返ったライザの瞳に移るラドリックの表情は虚ろだった。その瞳には何も映していない・・・・・ラドリックはエドを甲板に横たえると、無造作に立ち上がった。そして、腰に吊るした宝剣フラガラッハを抜き放つ。

「・・・・・・・・・・キングリュー・・・・・・・貴様だけは絶対に・・・・・」

「何か言ったか小僧?」

「貴様だけは・・・・貴様だけは絶対に許さん!俺と共に地獄に落ちてもらうぞ!」

「ラドリック!行ってはだめ!」

ラドリックはそう叫ぶとフラガラッハの鞘を投げ捨てた。そして、両手でフラガラッハを下段に構えると、船尾楼の壇上に居るキングリューに向けて走り出した。止めようとしたライザの手はラドリックには届かない・・・・・

「うおぉぉぉぉぉ!!」

走りながら雄叫びを上げるラドリック・・・・その目には狂気の炎が燃え上がっていた・・・・・








「ふ・・・・・愚かな・・・・まあこちらは手間が省けるがな」

自分に向かって突進してくるラドリックを見ながら、キングリューは呟くと、横のマスケット兵の銃を奪い取った。そして、ラドリックに照準を合わせる。

「死ね!!小僧!」

叫びと共にキングリューは引き金を引く・・・・放たれた弾丸は、ラドリックの体を貫くはずだった。

「何!」

しかし、キングリューの放った弾丸は、ラドリックを貫く事は叶わなかった。ラドリックの尋常ではない突進がキングリューの奥底にある恐れを呼び起こし照準を狂わせたのか、それともラドリックを何かが護ったのか・・・・・

「何をしている!あの小僧を蜂の巣にしろ!!」

キングリューはマスケット兵に命令した。号令と共に10を越す弾丸がラドリックを狙う・・・・・そして、その一つがラドリックの肩に当たり、蒼いパイレーツコートに真紅の華を咲かせた。

「やったか!」

キングリューは叫んだ。しかし、ラドリックは痛みを感じていないのか、少しよろめいたものの、足を止めない。そして・・・・聞こえてくるのは雄叫び・・・・

「や・・・・奴は痛みを感じないのか!」

止まらずに突っ込んでくるラドリックにキングリューは恐怖した。マスケット兵たちは弾込めを始めるが、その間にもラドリックはキングリューに向かって突進していく・・・・そして、ラドリックは階段を駆け上がる。

「キングリュー!!」

階段を駆け上がったラドリックは、キングリューに向かって走った。それを遮ろうと士官が数人、ラドリックの前に立ちはだかる。

「邪魔だ!!」

ラドリックはそう叫ぶと、フラガラッハを振るった。銀光が軌跡を描くたびに、ある者は脳天から、またある者は胴から血飛沫を上げて倒れる・・・・・今までのラドリックから考えられない剛剣・・・・いや、狂剣・・・

「でやぁ!!」

弾込めが間に合わないマスケット兵が、その銃でラドリックを叩きのめそうと銃を振るう。しかし、ラドリックがフラガラッハを一閃させると、そのマスケット兵は、銃ごと両断された。その返り血によって、ラドリックの蒼いパイレーツコートが真紅に染め上げられる・・・・その姿は敵の戦闘意欲をなくすのに十分だった。

「ひ・・・・ひぃ!」

ひとりのマスケット兵が悲鳴を上げて逃げ出した。それにつられるように、残りの兵も逃げ出す・・・・そして、ラドリックの前にはキングリューただ一人が残った。

「キングリュー・・・・貴様だけは絶対に許さない・・・・・」

瞳に狂気の炎をちらつかせながら、熱病に侵された病人のような足取りで一歩一歩キングリューに近づくラドリック・・・・

「ば・・・化け物め!!」

キングリューは腰に差した剣を抜くと、ラドリックに斬りかかった。しかし、ラドリックはその斬撃を無造作に受け止めると、そのまま押し返した。キングリューはバランスを崩し、その場に倒れる。

「キングリュー・・・・お前さえ居なければ、多くの人が傷つき倒れる事もなかった・・・エドも・・・・死ぬことはなかったんだ!」

「俺は自分の欲望に従ったまでだ!自分の欲望に忠実に生きて何が悪い!自分の野望の為に他人を蹴落として何が悪いというのだ!弱き者は強き者に従っていればいいのだ!」

ラドリックの言葉に叫び返すキングリュー・・・尚も言葉を続けようとするキングリューを黙らせるように、ラドリックは血塗られたフラガラッハをキングリューに突きつける・・・・


「弱き者は強き者に従う・・・か」

ラドリックはそう呟きながら、フラガラッハを振り上げる。

「ならば・・・貴様もその法則に従え・・・・・死ね!キングリュー!!」

ラドリックはそう叫ぶと、フラガラッハを振り下ろした・・・・



§2§



しかし、ラドリックは剣を振り下ろす事は叶わなかった。ライザがキングリューとラドリックの間に滑り込むようにして立ちはだかったからだ。突然のライザの行動に、ラドリックは剣を止めざるをえなかった。

「ラドリック!やめなさい!」

「ライザ!何故止める!こいつはエドを!俺の副官を!」

「それはわかっているわ!でも、自分を見失ってはだめ!」

ライザは両手を広げたまま、ラドリックの瞳を見た。ラドリックの瞳にはまだ狂気の炎が揺らいでいた。

「私も兄さんが怪我をしたときに思ったわ・・・「キングリューさえいなければ」と・・・・でもね、ラドリック・・・・あのあと単艦で出撃して、そしてラドリック達に救われたときにわかったのよ・・・・自分の愚かしさが・・・」

「愚かしさ・・・・・?」

「そう・・・あの時は、兄さんが怪我をしたショックで自分を失っていた・・・そのせいで、マクレガーにあんな大怪我をさせてしまった・・・・それは私が自分を見失った為・・・・」

「ライザ・・・・」

「復讐は何も生み出さないわ・・・それに、キングリューは国事犯よ。キングリューの処分は女王陛下がお決めになられる事」

ライザはそういうと、キングリューを一瞥した。キングリューはラドリックに圧倒されたのか、甲板に座り込んだまま動かない。

「それに、こんな奴の為に貴方の手を汚してはだめ、エドの為にも」

「だが・・・・こいつのせいでエドは・・・・!」

「ラドリック・・・・エドは生きてるわ」

「な・・!ライザ!今なんて!」

「あれを見なさい」

ライザはそう言うと、エドが横たわる方を向いた。ラドリックもそちらを見る・・・・エドの横には船医のカークやロイが付き添っていた。

「貴方が突撃したあとに、ロイがカークさんを連れてきたのよ・・・一命は取り留めたようよ・・・・もっとも、まだ気がついてはいないようだけど・・・」

「エド・・・エド・・・・が生きてる・・・・・」

そう呟くラドリックの目から、狂気の炎は消えた。ラドリックの瞳にいつもの光が戻る・・・・

「ラドリック、ここは私に任せてエドの所へ行ってあげなさい」

「あ・ああ・・・」

憑き物が落ちたような表情で、よろめきながらもエドのいる甲板へ下りていくラドリック・・・・その姿を見てライザは微笑んだ。

(自分が怪我してるのを忘れてるのかしら・・・・)

そして、ライザはキングリューの方を向いた。その顔にはラドリックに向けた微笑は消え、冷徹な女士官の表情が浮かんでいた。

「キングリュー伯爵、貴方を国家反逆罪で逮捕します」

「ふ・・・・あの小僧はともかく・・・・貴様のようなガキに捕まる俺では!」

ラドリックが居なくなったのを好機と思ったのか、キングリューは手元に転がっていた剣を手にとってライザに突き出した。しかし、ライザはそれをかわすと、抜き放ったサーベルで跳ね上げた。剣はキングリューの手を離れ、後ろの甲板に突き刺さる・・・

「キングリュー・・・・私を甘く見ないで欲しいわね、これでも私は栄光あるイングランド海軍の士官よ、一対一で貴方に負けるほど弱くはないわ!」

ライザはそういうと、キングリューの喉元にサーベルと突きつける・・・・キングリューの喉からひとすじの血が流れ出る。

「女王陛下の勅命がなければ、私がこの手で貴方の息の根を止めていたわ。貴方にはもう逃げ道はない・・・・貴方にお似合いなのは栄光ではない・・・・刑場の絞首台よ!」

「くっ・・・・・・」

突きつけたサーベルを鞘に収めながら言い放つライザ・・・その言葉にキングリューは再び頭を垂れた・・・・・・




§3§




「カーク!エドは!」


ラドリックはエドの元に駆け寄った。そして、エドの傍らにいたカークに問いかける。

「なんとか一命は取り留めたよ。かなりの数の弾丸を受けたみたいだけど、急所は外れていたから何とかなったんだ。ただ・・・・まだ意識が戻ってないんだ・・・・」

ラドリックの問いかけにカークが答える。その言葉を聞いて、ラドリックはエドに呼びかけた。

「エド!起きるんだエド!一緒にロンドンに帰るんだ!」

「そうですぜおやっさん!おやっさんが居ないと誰がBand of lightの副長を勤めるんですか!」

「そうだ!俺はまだまだひよっこだ、お前が居ないとだめなんだ!エド!戻って来い!」

エドの手を握りながら呼びかけるラドリック・・・・と、その時、エドの手がラドリックの手を握り返した。力はこもってない・・・・だが、確かにエドの手はラドリックの手を握り返していた。そして、閉じた目が開かれる・・・・

「エド!!」

「・・・・・ぼっちゃん・・・・・・」

「エド・・・・・よく・・・・・・」

「何泣いてるんですか・・・・・泣くような年じゃないでしょう・・・・・」

泣き崩れるラドリックを見ながら、エドはそう呟いた。そして、空いている手でコルセアコートの胸元を探る・・・・そして、再び出てきた手には、折れ曲がった十字架が握られていた。

「どうやら・・・・・娘とあいつが・・・・・マリアと・・・ルシアが・・・助けてくれたみたいでさ・・・・・」

エドは折れ曲がった十字架をラドリック達に見せると、顔をしかめながらも不器用に笑った・・・・


「ああ・・・良かったなエド・・・・・マリアちゃんやルシアさんが待つロンドンに帰ろう・・・・・」

ラドリックはそう言うと、エドの手を強く握った・・・・・




両軍を合わせて20隻以上が参加したオポルト沖海戦はこうして幕を閉じた・・・・まさに死闘であった・・・・・


end
posted by ラドリック at 13:58| Comment(5) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
エドさん生きてター!。゚(゚´Д`゚)゜。ヨカッター
微妙に商会チャ内で言った発言が当たって
いたのでドキドキw
Posted by Manon at 2007年02月17日 16:27
エドさん、よかった・・・。
これで、安心して冒険にいそしめます☆
中編の時は死亡フラグが怖くて書き込みできませんでした(爆)

今日は体調が悪いせいか黒妄想が・・・
止めに入ったのがゴードンだったら一緒にずんばらりん・・・(ぉぃ
「自分を・・・見失っては・・・だ・・・」
「なぜだ、ごおおおどおおおおおおおおん」

ゴメンナサイ、暴走しかかりなので、ここらでヤメ;

Posted by ライル at 2007年02月19日 21:14
>Manonさん

ほんとに・・・ほんとに商会チャットではドキ
ドキさせられましたよ、まあ・・・ありがちな
展開なのでしょうがないんですけどねw

>ライルさん

ゴードン・・・・その手もあったなぁ・・・(ぇ
中編の時に書き込んでもらえば、話は変わって
いたかも!(マテ
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年02月20日 22:12
このとき一命を取り留めたエドこそ、

のちのエドモンド本多である。


『ストリートファイター列伝』より


ということで、お久しぶりにゴザイマス。
サマーソルトキックが飛んできそうでワクテカ!

僕も今度SSを書いてみたいと思ってるのですが
ラドリックさんはどうやってストーリーを考えているんですか?
ぜひコツを教えていただきたく候。

Posted by かぬへる at 2007年03月01日 17:54
>ブラザー

・・・・熱でもあるのか?敬語なんて使って(ぇ

そうだなあ・・・私が書いてるSSは一応「現
実のプレイを元に脚色をしたもの」なので、ブ
ラザーなら・・・・そう、紋章収奪の話とかな
んかが書き易いんじゃないかなぁ・・・

「双頭の大鷲・・・・あの紋章はドイツ傭兵艦
隊か!」

かぬへるは目の前に展開する艦隊の帆に描かれ
た紋章を見て叫んだ。ドイツ傭兵艦隊・・・・
そう、スウェーデン私掠艦隊と並んで、バルト
海最強の艦隊と言われる艦隊である。

「各員戦闘用意!砲撃戦ではこちらが不利だ、
敵艦隊の中央に居る旗艦に接舷するぞ!」

かぬへるは周りの部下にそう言うと、その隻眼で
もう一度敵艦隊を見た。

(必ず・・・必ずあの紋章を手に入れてみ
せる・・・!)

こんな感じかなw
Posted by ラドリック at 2007年03月03日 15:46
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。