2007年04月17日

海賊の集まる島

§1§



「Band of lightとの距離500!砲弾装填完了しました!すでにpip船長の船は砲撃を開始しています!」

副官のロシェの言葉にレヴィローズは頷くと、Band of lightの方を見ながら言葉を放った。

「1番から順番に発射して!但し、絶対にBand of lightには当てないこと!

レヴィローズの命令をロシェが復唱する。砲術長の号令とともに、無数の砲弾がBand of lightに向かって放たれた。

しかし、レヴィローズが厳命したとおり、砲弾はBand of lightの左右に着弾するが、派手な水柱を上げるばかりで肝心の船体には命中しない。同じく並行しているpip船長の船から放たれた砲弾も命中していなかった。
・・・・そう、これは芝居・・・・ラドリックBand of lightが海賊島であるナッソーに潜入する為の芝居なのだ。

グレッグ男爵にナッソーの調査を依頼されたラドリックは、一緒にカリブに来ていたレヴィローズ、pip、養殖おりびあに協力を頼み、各国の哨戒艦隊から追われるイングランドの私掠船を装ってナッソーに潜入する事にした。そして、わざとナッソー周辺に張り巡らされた海賊達の哨戒網に引っかかるように、偽りの艦隊戦を行なっているのだった。その為、Band of lightは海賊船に偽装しており、一見普通の船には見えなかった。

「・・・・・うまく行くかしら・・・・・」

偽りの攻撃を加えながら、レヴィローズは呟いた。既にナッソーの哨戒網奥深くに入っているにもかかわらず、レヴィローズ達の艦隊を迎撃する艦隊も海賊船に偽装してるBand of lightを救援する艦隊も出てくる気配がなかった。その静けさが、レヴィローズの不安を駆り立てた。

「後方のおりびあ船長の船がBand of lightに砲撃しています!」

「何ですって!おりびあさんは周囲警戒の役で砲撃には参加しないはずよ!」

レヴィローズはそう言うと、養殖おりびあの船を見た。養殖おりびあのアラビアンガレーは、Band of lightに接近しながら砲撃を加えていた。一見それは、砲撃戦に業を煮やしたガレーが接近戦を仕掛けたようにも見えた。

「船長、おりびあ船長から伝書カモメです」

ロシェは、おりびあの所から放たれた伝書カモメの足についていた連絡文をレヴィローズに手渡した。レヴィローズはその連絡文を開く・・・そこには「偽装とわかる偽装は偽装にあらず。危険が増すだけ」と書かれていた。

「まさか・・・おりびあさん本気で砲撃を仕掛けるんじゃ・・・・」

レヴィローズがそう思った瞬間、激しい爆発音が聞こえた。レヴィローズがその爆発音の方を振り向くと、おりびあの船の砲撃がBand of lightの船腹に命中し、黒煙を上げていた。おりびあの船は更にBand of lightに肉迫する。

「おりびあさん!」

レヴィローズは叫んだ。そしてロシェの方を向くと、周囲を警戒するように命令を下す。そして・・・・

「船長!右前方の島影に艦影!ガレオン級が4隻・・・ようやく出てきたようです!」


ロシェの言葉にレヴィローズは頷くと、砲術長に合図の空砲を撃たせた。その合図にpip船長もおりびあ船長も、船を転回させて戦闘区域から離脱する構えを見せた。ラドリックのBand of lightは、消火作業を続けながら、前方の島に流れいく・・・


「ロシェ、私たちも戦闘区域を離脱します!そして、打ち合わせの通りに集合場所へ針路を!」

レヴィローズの命令をロシェが各所に伝える。そして軋むような音とともに、船は転回した。

「お兄様・・・ご無事で・・・・」

レヴィローズは後方を振り向きながらそう呟いた。その目線の先には、ナッソーの艦隊に囲まれるBand of lightの姿があった・・・




§2§




「こりゃ酷くやられたな・・・・・」

Band of lightの側面に開いた穴を見ながら、その男は言った。

ナッソーから出撃してきた私掠艦隊に囲まれたラドリック達は、そのままナッソーへと誘導された。そして、ナッソーの桟橋についたBand of lightを無数の海賊たちが囲む。

「とりあえず、何処を縄張りにしてるのか教えてもらおうか、それと、なんで追っかけられてたんだ?」

Band of lightに乗り込んできたナッソーの出航所の係であるだろうその男は、胡散臭そうにラドリックの方を見てそう言った。

「ああ、俺達は東地中海を縄張りにしてたリック・マッケンジーの配下のもんだ。先代が死んじまってな、今は先代の息子であるこのランド・マッケンジーが俺達のお頭だ」

係の海賊の問いに、エドがラドリックを指差して答えた。

「なんだってぇ?このなまっちょろいのがお前達の親分だって?」

係の海賊はラドリックの全身を見回した。

「ああ、そうなんだよ。お頭はつい最近まで陸に居てな、先代が死んだ時にその遺言で戻ってきてもらったんだ」

「で?なんで東地中海の海賊がこっちまで出張ってきたんだ?」

「お前さんも海賊なら知ってるだろ?国際条約で東地中海が国家間の戦闘禁止区域になってからこっち、各国の討伐艦隊がうろうろしてやがるから、こちとら商売上がったりなんだよ。だから、景気がいいっていうカリブまで流れてきたんだが・・・昔襲ったことのある船に見つかってな・・・」

「なるほど・・・・そりゃ災難だったな」

エドのもっともらしい嘘に、係の海賊はうんうん頷く。

「それで、やられかけた所をここの艦隊に助けてもらったって訳だ。ありがたかったぜ」

「いや、困った時はお互い様だ。最近はこっちも欧州各国の討伐艦隊が多くてな、あんたらみたいな奴らも結構流れてきてるんだよ。まあ、開拓地に向かってる輸送船団を片っ端から沈めてるから、討伐艦隊も躍起なんだろうがな・・・・・まあ、ゆっくりしていってくれ、歓迎するぜ」

係の海賊はそう言うと、手を出した。ラドリックも慌てて手を出して握手を交わす・・・・しかし、係の海賊はすぐに手を振り解いた。

「おいおい、何してんだ気持ちの悪い」

「いや、手を出したから握手をするのかなと・・・」

ラドリックの言葉に係の海賊は天を仰ぐと、大げさに呆れて見せた。

「おいおい・・・誰が握手したいなんていった?金だよ金」

「金?」

「あんたらを助ける為に艦隊を出動させて経費がかかってるんだ。それにここに入るには上納金が必要なんだよ、そんなことも知らないのか?」

「・・・・すまない・・・で、上納金はいくらだい?」

「100万ドゥカードだ」

「・・・・・・エド、払ってくれ」

「ほらよ」

ラドリックの言葉に、エドが金貨がぎっしり詰まった皮袋を係の海賊に渡す。係の海賊は中身を確かめると、ニヤリと笑った。

「ようこそ海賊の島ナッソーへ、歓迎するぜ兄弟!」

係の海賊はそう言うと、Band of lightのタラップを降りて行った。

「・・・・・・・・ふぅ・・・・・」

海賊の姿が完全に消えたのを確認したラドリックはため息をついた。エドも横でため息をつく。

「取り合えず第一関門は突破しましたね船長」

「ああ・・・・これからが問題だがな・・・・」

そう言うと、ラドリックはエドの方を向いた。

「取り合えずエドはいつでも出航できるように準備をしておいてくれ。あと、損傷箇所の応急修理も頼む」

「了解でさ」

「何かの時には空砲を撃つ、その時は迷わず出航してくれ」

「ぼっちゃん、無理はしないでくだせぇよ?」

「わかってるさ・・・・・それと・・・・ディック!」

ラドリックがディックを呼ぶと、ディックはすぐに駆けつけた。

「何ですか船長?」

「一緒に来てくれ、もしもの時の為に腕の立つ奴が必要だ」

その言葉にディックはニヤリと笑う。

「船長、良い人選されますね。喜んでお供させてもらいやすぜ!」

「よし、じゃあエド、後は頼んだぞ」

ラドリックはそう言うと、ディックを連れてタラップを降りた・・・・・





§3§




「これはすごいな・・・・・」

辺りを見回しながら、ラドリックは呟いた。

ナッソーに降り立ったラドリックとディックは、ナッソーの保有する戦力を見極めるべく、辺りを偵察していた。といっても目立つ行動は控え、あくまで初めて来た所を物珍しく見ている風を装ってだが・・・・

「桟橋もBand of lightが使ったところ以外に複数あるみたいですね・・・・停泊してる船を数えただけでも20隻以上・・・・こりゃ一筋縄ではいきそうにないですぜ」

「確かにな・・・・しかも、あっちこっちから来た海賊が集まっているにしては統制が取れてる・・・」

ディックの言葉に答えながら、ラドリックは再び辺りを見回した。ディックの言うとおり、複数の桟橋には多数の船が停泊し、見張り台には常に数人の海賊が望遠鏡を片手に周囲を警戒している。しかも、防衛の為の砲台も各所に設置されていた。まさにナッソーは海賊のための要塞だった。

「しかし・・・・一体いつの間にこんな要塞を作ったんでしょうね・・・・俺達がここら辺で掃討戦を行なった時にはこんなものなかったのに・・・・」

「それだけ巧妙に隠してあったのさ、それか・・・・」

「それか?」

「欧州各国が新大陸に目をつけたのと一緒で、海賊達も新大陸に目をつけたのかもしれない・・・要するにグランドケイマンと一緒さ、ここは海賊達の開拓地って訳だ」

「なるほど・・・・・」

ラドリックの言葉にディックが頷く。そうこうしているうちに、ラドリック達は酒場にたどり着いた。流石に統制が取れていると言っても酒があるところは別問題のようで、カードに興じる水夫達や酒を浴びるように飲む海賊、果ては喧嘩をする海賊もいる始末だった。ラドリック達はそれらを横目に見ながら、ラドリックとディックはカウンターに座った。

「何を飲む?」

酒場のマスターだろう年を取った海賊がぶっきらぼうに聞いてくる。ラドリックはラムを二つ頼むと、その老海賊に話しかけた。

「おやっさん、このナッソーはいつできたんだ?」

「そうさなぁ・・・昔からあったが、こんなに賑わって来たのはつい最近だな・・・・あんたらは何処から来なすった?」

「俺達は東地中海からだ。あっちはオスマン艦隊や各国の討伐艦隊が目を光らせててな・・・・商売上がったりだよ」

「そうかい・・・・そういやぁ、この前も東地中海から流れてきた奴がいたなぁ・・・」

「そうなのかい?」

マスターの言葉にディックが相槌をうつ。

「ああ・・・確か・・・・バルバリア海賊からはじき出されたって言ってたなぁ・・・」

「バルバリア海賊・・・・・ハイレディンの所かい?」

「ああ、そうだ。ハイレディンの下でハイレディンの影武者までやってたらしいんだが、なにやらイスパニアの船を襲ったときに返り討ちにあって捕虜になったそうで、脱走してハイレディンの所に帰ったはいいが、配下と一緒にたたき出されたんだそうだ」

マスターの言葉にラドリックとディックは顔を見合わせた。

「船長・・・・」

「ああ・・・・・」

「おやっさん・・・・そのハイレディンに叩き出された奴ってのは・・・・・」

「ああ、あいつならここから毎日出航して辺りで輸送船団を襲ってるよ・・・いつもならそろそろ・・・・お、帰ってきたぜ」

マスターがラドリック達の後ろを指差す・・・それにつられて後ろを振り向いた二人の前には、忘れもしない顔があった・・・・

「おやっさん、ラムを・・・・・お・お前達は・・・・・!!」

その男・・・・そう、ラドリック達がシラクサ沖で捕虜にしたハイレディンの影武者は、ラドリック達の顔を見て固まった。

「お、知り合いかね?」

事情を知らないマスターは、ラムを用意しながら問いかける。

「知り合いも何も・・・・こいつらは俺をバルバリア海賊にいられなくした張本人だ!」

「な・・・なんだって・・・・と・・・・いうことは・・・」

マスターがラムの瓶を取り落とす・・・ラムの瓶が割れ、床に染みを作った。

「そうだ!こいつらは海賊なんかじゃない!イングランド海軍の密偵だ!」

影武者だった男の声が、ナッソーの空にこだました・・・・


It follows to the next time
posted by ラドリック at 22:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お待ちしておりました!
どうする!?どうなる!?ラドリック!!
Posted by まめたろう at 2007年04月20日 18:51
>まめたろうさん

ご来店ありがとうございます&先日はどうもで
したw

今回は如何だったでしょうか?続編も鋭意製作
中ですので、気長に待ってやってくださいね
^^;
Posted by ラドリック at 2007年04月25日 23:53
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