2007年06月02日

復讐の刃

§1§




「大理石は商館の方に運んで!仕入れてきた鉄鉱石と麻生地は奥の船倉に!」

ソフィアは書類を片手に持ちながら、交易品を運ぶ水夫達に矢継ぎ早に指示を出していた。アレクサンドリアでサラを船に向かえたラドリック達は、サラの部族の追跡を回避する為にアレクサンドリアを出航し、途中アテネに寄港して交易品を仕入れながら、ラドリックが所属する商会である「CAFE-de-Genova」の商館があるチュニスへ寄港したのだった。

「ソフィアさん、この仕入れ発注書なのですが、目を通したとら不備がありましたので修正しておきました」

「ああ、サラさんありがとうございます」

「では私はこれを持って交易所の方に行ってきますね」

「お願いします。護衛にはディックをつけますので」

「ありがとうございます。それでは」

サラは手にした書類をチャドリの裾にしまうと、ソフィアとラドリックに一礼して、ディックの待つ方へと歩いていった。

「どうだソフィア、サラさんは?」

「もの凄く助かってるわ。お兄ちゃんの100万倍役に立ってる」

「そ・そうか・・・・」

ソフィアの言葉にラドリックは頭を掻いた。サラを航海士として迎えた時に、ソフィアはサラを自分の補佐として雑用を手伝ってもらうつもりだった。しかし、サラは交易商である叔父の手伝いをしていたこともあり、雑用だけではなく商売上の様々な事にも素養を見せ、この一ヶ月余りの航海でソフィアにはなくてはならない存在になっていたのだった。

「流石に交易商の叔父さんの手伝いをしてただけあって、商売の基本をしっかり叩き込まれてるみたい。お陰様で私もかなり楽ができるわ」

「そうか・・・・良かったなソフィア」

「ええ、もしサラさんが良ければ、このままこの船にずっと乗っていて欲しいぐらいよ」

「ああ、そうなるといいな・・・・・じゃあ俺も所用を済ませてくるか」

ソフィアの言葉にラドリックは頷くと、舷側の方へ歩き始めた。

「所用って何があるの?」

「ああ、たまたま商館にベネットやjulian卿が来てるらしいんでな。久しぶりに会って話をしてくる」

「船の仕事はどうするのよ!」

「積荷の管理に関しては俺がいても役に立たないだろ?作業が全部終わったら、みんなには半舷休息を与えてやってくれ」


歩き始めた自分に問いかけるソフィアに手を振って見せながら、ラドリックは舷側へと歩いて行った。

「もう・・・・お兄ちゃんったら・・・・・」

ソフィアは頬を膨らませながらそう呟くと、自分の仕事に戻っていった・・・・


§2§



「しまったな・・・・こんなに遅くなるとは・・・・・」

ラドリックは港に向かいながらそう呟いた。商館でベネット達と再会したラドリックは話に夢中になり、ベネット達と別れて商館を出た時には闇が辺りを支配していたのだった。

「早く帰らないとまたソフィアにどやされるな・・・」

歩くスピードを速めながら、ラドリックは港への道を急いでいた。チュニスもイスラム圏の港らしく酒場が無い為、他の欧州の港と違い、酔っ払って路上に寝ている水夫や酔っ払い等もなく、辺りは静寂に包まれていた。

「・・・・・・?」

ラドリックは突然立ち止まると後ろを振り返った。しかし、そこには闇があるだけで他には何も見えなかった。

「・・・・・・気のせいか・・・・・」

ラドリックはそう呟くと、また港へ向かって歩きはじめた。そしてその瞬間、ラドリックの背後に黒い影が襲い掛かった。

「くっ!!」

ラドリックは咄嗟に体を捻ると、腰の剣を抜き放った。ラドリックの剣の白い軌跡と、黒い影の放った黒い軌跡が交差して火花が散る。

「!」

背後からの必殺の一撃を受け止められた影は、後ろに下がりながら体勢を立て直した。その影は黒いバヌースに身を包み、手には大振りなナイフを持っていた。その刃の色は黒・・・・・恐らく毒を塗っているのであろうその刃は、ラドリックに突きつけられていた。

「何者だ、と問うのは簡単だが・・・・答えてはくれないのだろうな」

ラドリックはその影に正対すると、油断無く剣を構えた。

「俺をラドリック・ガーランドと知って狙って来たのか・・・それともサラさんを狙う追っ手か・・・・・」

ラドリックの呟きに影は答えない・・・だが、覆面をした顔から覗かせる目には、明らかな殺意が込められていた。

「俺も色々と恨みは買っているからな・・・しかし、やられてやるわけには行かない・・・・このまま引くならあとは追わない。だが、向かってくると言うのなら!」

ラドリックはそう言うと、斬撃を繰り出した。影はその斬撃を紙一重で避けながら、ラドリックに肉薄する。そして、影が突き出した刃を、ラドリックは寸での所でかわした。

「やるな・・・・」

再び距離を取って睨み合う二人・・・・・そして数瞬の後、二人は交差した。

「くっ!」

「!!」

ラドリックは剣を持つ腕を押さえた。バヌースの腕が切り裂かれ、そこから血が流れ出す。しかし、影もナイフを取り落としてその場に蹲った。

「相打ちか・・・・・しかし、お互い浅手のようだな・・・」

ラドリックは痛みを堪えて剣を構えた。しかし影は自分の手を押さえると、身を翻して闇の中に消えた。そして、辺りに静寂とラドリックが残された。

「・・・いい引き際だったな・・・・」

ラドリックは傷ついた腕を布で縛って止血しながら、相手が残していったナイフを拾い上げた。その刀身にはやはり黒い液体が塗られたいた。

「・・・・・・これは・・・・・」

ラドリックはそう呟くと、よろめく様な足取りで、港へと歩を進めた・・・・・



§3§




「お兄ちゃん!こんな夜遅くまでどこをほっつき歩いてたの・・・・って、お兄ちゃんどうしたの!」

よろめきながらタラップを上がってきたラドリックを見て、ソフィアが顔色を変えて駆け寄ってきた。

「帰り道で刺客に狙われた・・・・すまないがカークを呼んで来てくれ」

「う・うん、わかった」

ラドリックの言葉にソフィアは頷くと、船医のカークを呼びに船室へ向かった。ラドリックは辺りを見回すと、傍らに近づいてきたエドに問いかけた。

「サラさんと・・・ディックの姿が見えないがどうしたんだ?」

「ええ、まだ交易所から帰ってきてないので、ソフィア嬢ちゃんが心配して、ロイを迎えに行かせた所でさ」

「・・・・・そうか」

ラドリックはそう呟くと、傷ついた腕を庇うように、舷側に背中をもたれさせた。

「ぼっちゃん、見当はついてるんですかい?」

「襲ってきた相手のことか・・・・大体はな・・・」

「ならいいですが・・・・あまり無茶はしないでくだせぇよ?」

「ああ・・・・」

「ラドリック!大丈夫か!」

エドとラドリックが言葉を交わしていると、船室から船医のカークが慌てて出てきた。カークはラドリックの傍に来ると、傷ついた腕を取った。

「痛!」

「治療をする為だ、我慢してくれ」

カークはそう言うと、慣れた手つきで傷口を水で洗い、薬を塗って包帯を巻いた。

「毒は奥まで入ってないようだが・・・・しばらくは動かさない方がいいな」

カークは包帯を巻きながらラドリックに言った。

「ああ、わかったよ」

ラドリックはカークに答えると、立ち上がって舷側からチュニスの街を見た。そこにはロイに先導されながら慌てて帰ってくるディックと、その後ろをついてくるサラの姿が見て取れた。

「どうやらディック達も無事に帰ってきたようだな・・・」

「そのようですね」

ラドリックの言葉にエドは頷いた。

「エド・・・・悪いがギムを呼んで来てくれないか?俺は船長室に居る」

「了解でさ」

「頼んだぞ」

ラドリックはそう言うと、船長室へ歩を進めた・・・・



§4§



トントン・・・・

サラは、ラドリックの個室のドアをノックした。ラドリックが刺客に襲われた日から数日・・・・毒の効果が不完全に出たのか、ラドリックは高熱を発して個室に引き篭もっていた。

「ラドリックさん、お食事をお持ちしました。入りますよ?」

ノックをしても返事が無いのを確かめたサラは、ドアを開けて中に入った。サラがベットの方を見ると、ラドリックはベットの上に寝ていた。

「ラドリックさん・・・・」

サラが再び呼びかける・・・しかし、ラドリックが起きる気配は無かった。

「・・・・・・」

サラは、食べ物を乗せたトレイを机に置くと、ラドリックに近づいた。そして、ラドリックが寝ている事を確かめると、懐から懐剣を取り出した。

「・・・・・・」

サラはその懐剣の柄を両手で握ると、刃を下にしてラドリックを刺そうとした。しかしその瞬間、サラの喉元に、後ろからナイフが突きつけられていた。

「サラさん・・・・剣を離してください。そうしないと貴方を殺すことになる・・・・」

ナイフを突きつけた主・・・・ギムは、押し殺した声でそう言った。サラは観念したように頷くと、懐剣を床に投げた。

「ラドリック様、もう結構です」

「ああ・・・・」

ラドリックはギムの声に答えると、ベットから起き上がった。そして、椅子を用意すると、サラに座るように促した。サラはその椅子に座って頭を垂れた。

「まさかとは思いましたが・・・・・やはりあの夜の刺客は貴方だったんですねサラさん」

ラドリックはそう言うと、懐から一振りのナイフを取り出した。それはラドリックがあの夜に拾ったもの・・・そう、アレクサンドリアで初めてサラに会ったときにサラが握っていたものだった。

「しかし・・・・なぜ私を殺そうとしたんですか?私は貴方を部族の追っ手から助けたことはあっても、害を及ぼしたことは無いはずです。それが何故・・・・・」

ラドリックは困惑した表情でサラを見た。サラは項垂れたまま、ポツリと呟いた。

「それは・・・・・・・それは、貴方が・・・・」

「俺が・・・・?」

「そう・・・貴方が私の最愛の人を殺したからです・・・」


It follows to the next time
posted by ラドリック at 21:40| Comment(7) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
急展開ktkr
争いは争いを呼ぶんですね…
Posted by まめたろう at 2007年06月02日 22:28
>私の最愛の人(ry


|ω・`).。oO(ゲニオソロシキハオンナノシュウネンナリ・・・)

|彡サッ

Posted by 通りすがりのルロイ=ミルトン at 2007年06月03日 02:07
いつのまにJ卿をその手に……!

|彡サッ
Posted by 通りすがりのカヨワイお針子 at 2007年06月04日 23:15
 この辺の話は、公式シナリオから完全に外れたオリジナルですね・・・
先が読めなくて茶のしみです。
 でも、今までの伏線からすると、彼なんだろうナァ・・・
Posted by ランフィード at 2007年06月05日 00:27
>まめたろうさん

そうです、争いは争いを呼ぶのです。私は平和
主義者なのですが・・・・(ぇ

>ルロイさん

・・・・・重い言葉ですが、経験がおありで?w

>恐らくS嬢

残念ながらJ卿ではないんですよ。ご希望なら
ご一緒しますが・・・(マテ

>ランさん

こらこら、先読みしないw

一応、副官(宝石商のカーラ)を雇った経緯を
SS化してるつもりなので、完全に外れてるわ
けではないんですがね・・・・

まあ、あの人の扱いもなんか変わったそうな
ので、その意味でなら公式から外れてま
すが・・・(謎
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年06月06日 20:49
うわぁ〜〜〜><ドキドキ!!

どうなるの?どうなるの?あぁぁ〜〜〜サボリネットが定着しそうですwww

商館がチュニスなのは一緒なのに、なかなかチュニスで会えないのはなぜ?

今度、私達の商館にもお茶飲みに来てくださいね
衛兵が立ってる端っこの商館ですから♪



Posted by エデン at 2007年06月13日 17:27
>エデンさん

最近仕事が忙しくてまともにINしてないです、レスが遅れて申し訳ない(汗

チュニスの商館には最近まったく顔出してないですねぇ・・・・今度機会があればそちらにも是非寄らせていただきますね、続編はもうしばらくお待ちください^^;
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年06月18日 08:39
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