2007年06月24日

追憶

§1§



「そう・・・貴方が私の最愛の人を殺したからです」


サラの言葉にラドリックは凍りついた。そして、呻くように呟く・・・・


「俺が貴方の最愛の人の命を奪ったと?」

「ええ・・・そうです」

ラドリックの呟きにサラが答える。

「そう、貴方は私の愛しい人を・・・そして、我が部族最強の者であったあの人を殺したのです」

その言葉にサラの後ろに居たギムの表情が変わる。そして、ラドリックは再び呻くように呟いた。

「部族最強の男・・・・まさか・・・・貴方の愛しい人とは・・・」

「そう、私の愛しい人・・・許婚の名はラミアと言います・・・・」




§2§



「やはり・・・・貴方はラミアの・・・」

「そうです、ラミアは私の許婚でした。しかし、ラミアは貴方に殺された・・・あまりにも無残な方法で!」

「そんなことは無い!確かにラミアを倒したのは俺だが、あれは1対1の尋常な勝負で勝ち取った勝利だ!」

サラの言葉にラドリックは激昂した。あの時、ラドリックとラミアはお互いの死力を尽くして戦った。そして、紙一重の差でラドリックが勝利を収めたのだった。

「そんなはずはありません!ラミアからの音信が途絶え、不審に思った部族の者がラミアの所に駆けつけた時には、ラミアは無残な姿で放置されていたんですよ!村に運ばれて来たラミアの遺体を見た時に私は思いました・・・・こんな無残な殺され方をされる必要があるのかと!」

「ちょっと待ってください!確かにラミアを倒したのは俺です。しかし、ラミアの遺体はここにいるギムと一緒にその場に埋葬しました。放置などしていない!」

ラドリックの言葉に激昂するサラにラドリックは反論した。その言葉にサラの表情が変わる。

「そんなことはありません!アラムは確かにラミアの遺体が膾切りにされてファラオの玄室の入り口に晒されていたと!」

「サラさん・・・ラドリック様の言うことは本当です。あの時ラドリック様はラミアを丁重に葬ってくれました。私の願いを聞いてくださったのです。一時期とはいえ、ラミアに仕えていた私の願いを・・・・」

「でも・・・そんな・・・・」

ギムの言葉にサラは首を振りながら呟く。

「でも・・・もし貴方達の言うことが本当なら・・・何故ラミアは晒されていたんですか・・・・アラムは嘘を言っていたの・・・・?」

「失礼ですが、アラムと言うのは?」

「アラムはラミアの友人です・・・そして、ラミア亡き後の私の婚約者・・・・」

ラドリックの問いかけにサラが答える。

「それでは貴方が逃げてきたのは、そのアラムという男と結婚するのが嫌だったからなのですか・・・?」

「それもありますが・・・・私は、ラミアをあんな姿にした相手を殺すまで、ラミア以外の男と結婚することなんてできなかったからです・・・そしてあの時、部族の者に連れ戻されそうになったその時・・・貴方が現れたのです」

「そうでしたか・・・・」

サラの言葉にラドリックは頷くと、手にした懐剣をサラの手に乗せた。

「・・・・・・?」

「サラさん、俺は神に誓って卑怯な真似をしてラミアを倒したのではありません。しかし、貴方がそれほど俺のことを憎んでいるのなら・・・・その懐剣で俺を殺してください。そしてラミアの仇を取るといい」

「!!」

「ラドリック様!!」

ラドリックの突然の言葉に驚くサラとギム。

「埋葬したラミアの遺体を誰が晒したのかは俺にはわかりませんし、膾切りにしたつもりもありません。しかし、ラミアを倒したのは俺です。その俺を殺すことで貴方の気が済むのなら・・・・そうしてください」

ラドリックはそう言うと、ベットに腰掛けて目を瞑った。

「・・・・・」

サラが懐剣を握る手に力を込める・・・そして、その剣がラドリックに向いた瞬間、ギムはサラの手を掴んだ。

「サラさん、待ってください!」

「離して!」

「止めるなギム!」

サラはギムの手を振り解こうともがくが、ギムは手を握ったまま離さない。

「この人は自分の罪の重さを感じているから私に刺されようとしているのです!私にラミアの・・・あの人の仇を討たせて!」

「違う!ラドリック様はラミアを倒したことを後悔して貴方に刺されようとしているわけじゃない!それに・・・・そんな事をしてもラミアは喜ばない!」

ギムの言葉にその場に崩れ落ちるサラ・・・・

「じゃあ・・・私はどうすればいいと言うの?ラミアの仇も討てない・・・部族にも帰れない・・・・私はどうすればいいと言うの!」

「サラさんが納得いかないのであれば、この船に残ってラドリック様の行動を見てください。そして、ラドリック様がラミアを無残な姿で晒すような人間かどうかを確かめてください」

ギムはそう言うと、サラが持っていた懐剣を懐にしまった。

「この剣は私が預かります。そして、貴方がラドリック様を殺すに値すると判断したその時は」

「・・・・その時は・・・・?」

「その時は・・・私がこの剣でラドリック様の命を絶ちましょう、そして・・・・私もラドリック様のあとを追いましょう」

「・・・・ギム・・・さん・・・・」

ギムの言葉を聞いて、サラは一瞬ギムの顔をみつめると、急に立ち上がって部屋を出て行った。

「ギム・・・・何故止めた!」

「ラドリック様は無駄に命を捨てようとされました。それはラドリック様の自己満足です!」

ラドリックの言葉にギムが答える。

「あの時・・・そう、ラミアと命を賭けて戦ったあの時、ラドリック様はラミアに勝ちたい一心で剣を振るったはずです。そしてその結果ラミアに勝った・・・・何を恥じることがあるのですか?」

無言のラドリック・・・ギムはさらに言葉を続ける。

「それなのに今、ラドリック様はサラさんの為に命を投げ出そうとしました。周りから見ればどう見えるかわかりません。しかし私に言わせれば、それはラドリック様の自己満足です!そんなことをしてラミアが浮かばれると思うのですか?お互い実力を出し合った結果、敗れたとはいえラミアは満足して死んだはずです!それなのにラドリック様は無駄に命を捨てようとした。それは死んだラミアに対する侮辱でしかない!」

「・・・・・侮辱・・・・か」

ギムの痛烈な言葉に、ラドリックはポツリと呟いた。

「確かにそうかもしれないな・・・しかし、サラさんの誤解を解くためにはその方法しかないと思ったんだ・・・」

そうラドリックが言った瞬間、ソフィアが血相を変えて部屋に入ってきた。

「お兄ちゃん!一体サラさんに何したの!」

「ソ・ソフィア?」

「今サラさんと廊下ですれ違ったんだけど、サラさん泣きながら甲板に上がって行ったわよ!まさかお兄ちゃん・・・・サラさんに何かしたんじゃないでしょうね!」

「お・俺は何もしていない!」

「じゃあ何でサラさんは泣いてたのよ!」

「そ・・・それは・・・」

ソフィアに問い詰められるラドリックを横目に、ギムはそっと部屋を出て行った。サラを追いかける為に・・・・



§3§




「ラミア・・・・・」

サラは舷側に手を置いて虚空に浮かぶ月を見ながら呟いた。

「私は一体どうすればいいの?何故私を置いて逝ってしまったの・・・?」

サラの頬に涙が伝う・・・・

「サラさん・・・・」

その声にサラが振り向くと、そこにはギムが立っていた。

「ギムさん・・・」

「先程は手荒な真似をしてすいませんでした。しかし、どうかわかってください」

「ええ・・・確かに復讐は何も生み出しません。ラドリックさんを殺したからといって、あの人が・・・・ラミアが喜ぶとは思えません。それに、ラドリックさんがラミアをあんな姿で晒したとは思えませんから・・・」

サラは頬を伝う涙を手で拭った。

「そういえばギムさん、貴方はさっきラミアに仕えていたと言ってましたよね?」

「ええ」

「では・・・・何故ラミアが砂漠の部族の服装ではなく、航海者のような服装をしていたのか理由をしりませんか?」

「ああ・・・」

「一度ラミアに聞いた事があるのですが、あの人は笑って答えてくれませんでした」

サラの言葉にギムは頷くと、舷側に手をかけた。

「あの服は、私がラミアに頼まれて買って来た物なのです」

「ラミアに頼まれて?」

「ええ、ラミアは部族の掟に縛られている自分を嫌悪していました。そして、自由を謳歌する航海者に憧れていました。その憧れが次第に憎悪に変わって行ったのですが・・・・」

「憎悪に?」

「サラさんもご存知の通り、ラミアは部族最強の者として、ファラオの遺跡の番人をしていました。そして、遺跡の調査や財宝目当てで訪れる航海者達を排除するたびに、部族の掟に縛られる自分と自由を謳歌しどこにでも行ける航海者達とを比べたんでしょう・・・そして、その憧れが憎悪に変わるまで時間はかからなかったのです。そのアンビバレンツが、一方では航海者の服装に憧れる事・・・そしてもう一方が航海者を憎悪し、遺跡に訪れた航海者を排除する事・・・・」

「・・・・・」

「ラミアは言っていました。「いつか部族の掟に縛られない身になったら、許婚を連れて海に乗り出したい」と・・・・そして、二人で自由を謳歌するんだと・・・・それが自分の命題に対する答えだと・・・・」

「あの人がそんな事を・・・・・」

ギムの言葉にサラが呟く。

「その許婚の名前は教えてくれませんでしたが・・・・サラさん、貴方だったのですね」

「ええ・・・・」

ギムの言葉にサラは頷いた。

「ラミアは、一族の中でも恐れられていました、あまり感情を表に出す人ではなかったから・・・でも私だけには優しかったのです」

「そうだったんですか・・・・・」

「ギムさん・・・私はどちらにしても部族の元へは戻れません。ですから、あの人が憧れていた自由なる海を・・・この船に置いて貰ってもう少し眺めていたいと思います・・・宜しいですか?」

「ええ、勿論です。ラミアもきっと喜ぶことでしょう。」

サラの言葉にギムは頷くと、船室への階段があるほうに歩き始めた。

「ラドリック様にサラさんの気持ちを伝えてきます。サラさんはもう少し風に当たっていてください」

「ありがとうギムさん・・・」

ギムの言葉にサラは答えると、再び虚空に浮かぶ月を見た。

「・・・・・ラミア・・・・・」

そう呟くサラの頬に、再び涙が流れ落ちた・・・・・
posted by ラドリック at 22:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
( ┰_┰) シクシク・・・・サラ・・・

わかるわぁぁ〜〜(。・・。)(。. .。)ウン

女は大切なものを守るために夜叉にもなれる・・・けれど守るべき人が逝ってしまったら・・・

激しい情熱がサラの身体の中を熱風の如く駆け巡ってるんだろうな(/ー ̄;)
出口の無い想いはどこへ行けばいいんやろうねぇ〜〜
Posted by エデン at 2007年06月25日 22:53
>エデンさん

コメントありがとうございます。

今回は新しい副官が入る契機ということで、三
話構成で書いてみましたが・・・ちょっとぐだ
ぐだになったような気がしています^^;

しかし・・・・ラブロマンス?を書くのはしょう
にあってないです・・・・書いてる傍から虫唾
が(ぇ
Posted by ラドリック(管理人) at 2007年06月27日 23:50
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