2007年01月21日

戦雲迫る

§1§



「ライザ!キングリューが艦隊を率いて北上しているというのは本当か!」

カリブでの任務を終え、ロンドンに帰港したラドリック達を待っていたのは「イスパニア艦隊北上す」の報告だった。それを聞いたラドリックは、同じく報告を聞いてアムステルダムから駆けつけたフレデリクと共に、ミドルトン邸に駆けつけたのだった。


「ラドリック・・・・フレディも・・・・・そうよ、キングリューがイスパニア艦隊を率いてこのロンドンを目指して北上しているわ」

海軍士官の軍服に身を包んだライザは、配下の水夫達に次々と指示を与えながらそう言った。

「それで・・・・ライザ、お前はどうするんだ?と言っても、答えは一つのようだが」

フレデリクの言葉にライザは無言で頷いた。その顔には悲壮なまでの決意が見て取れた。

「私のせいでお兄様は傷ついてしまった・・・・もう、誰も傷つけたくない・・・だから、私はキングリューを倒す・・・刺し違える事になろうとも・・・・」

そう、ライザが呟いたその時、部屋のドアが荒々しく開けられた。一同がドアの方を見ると、そこにはマクレガーが立っていた。

「ライザ!女王陛下がお前を呼んでいるらしい。丁度良かった、ラドリックも一緒に来てくれ!」

「陛下が私を・・・・・・?でも私は・・・・・」

マクレガーの言葉に戸惑うライザ・・・フレデリクはライザの肩に手を置くと、ライザに語りかけた。

「取り合えず陛下の所に行って来い、出撃の準備は俺が整えておく」

「・・・・ありがとう、フレディ・・・・・」

ライザはフレデリクにそう言うと、ラドリックとマクレガーの方を向いた。

「ラドリック、マクレガー、陛下の所に行きましょう」





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2007年01月10日

船上の舞踏会

§1§



「敵重キャラックの船尾を取りました!」

「ファイエル!」

ロイの声に素早く反応した砲術長のエルウッドが,指揮棒を振りながら叫ぶ・・・号令と共にBand of lightの右舷から放たれた無数の鋼の牙が、バハマ海賊の重キャラックの船尾に迫り・・・・・重キャラックは轟音と共に火柱を上げた。

「全弾命中!敵艦大破!」

「よし、次弾装填準備!エド、ベネット達の方はどうなっている?」

沈みゆく重キャラックを見据えながら、ラドリックは傍らにいるエドに声をかけた。漂流船The new earthの最期を見届けたあと、サントドミンゴを経由してハバナに入港したラドリック達は、同じくハバナに入港していたベネット、スーザ、Manon達と艦隊を組み、付近の海賊を掃討していたのだ。

「ベネット船長とManon船長はあそこですぜ」

そう言ってエドが指差した方をラドリックが見ると、そこにはバハマ海賊の重キャラックを間に挟んで集中砲撃を加えているベネット達が居た。ベネットとManonの砲撃は苛烈を極め、重キャラックはあちこちから煙を出しながら散発的な抵抗を繰り返す・・・・撃沈は時間の問題に見えた。

「あっちは大丈夫だな・・・・スーザさんの方はどうなっている?」

「スーザ船長は・・・・・ああ、そこでさ」

ベネット達の居る方向とは逆の方向にスーザの船は居た。スーザの乗船であるガレオンは、敵艦隊の旗艦である重キャラックと並んで動きを止めていた。恐らくどちらかが接舷して白兵戦となったのだろう。

「ロイ!スーザさんの船が敵艦と接触してどれぐらいになる!」

ラドリックはトップマストで周囲を警戒しているロイを見上げた。ラドリックの問いかけにロイはしばし考えた後、答えを返した。

「そうですね・・・・・もうニ時間ぐらいでしょうか・・・・・」

ロイの答えを聞いた瞬間、ラドリックの表情が変わった。ラドリックはスーザの船を一瞥すると、航海長のレイモンドの方を向いた。

「レイモンド!スーザさんのガレオンにBand of lightを接舷させろ!多少荒っぽくなっても構わん!」

「了解!」

「ギムはベネットとManonさんに信号を!そちらが片付いたらすぐにスーザさんの船に向かうように伝えろ!ディックは斬り込み隊の連中に用意させろ!接舷したらすぐに乗り込むぞ!」

「了解ですが・・・船長・・・どうしたんですかい?そんなに慌てて?」

突然の命令に戸惑うディックに、ラドリックは表情を変えることなく言った。

「おかしいとは思わないか?スーザさんの船はガレオンとは言え、その白兵戦能力はこのBand of lightより上だ・・・・それが二時間も接舷したままということは・・・・」

「まさか・・・・押されていると?」

「思いたくはないが・・・・・・最悪の事態も考えておいた方がいい」

「りょ・了解しました、斬り込み隊の連中をいつでも乗り込めるように準備させておきます!」

ディックはそうラドリックに言うと、慌てて下に降りて行った。それと同時に、レイモンドの操船により、Band of lightはその船首をスーザの船に向けた。

(杞憂で終わればいいが・・・・・・)

ラドリックはそう思いながら、徐々に迫るスーザの船を見つめた・・・

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2006年09月03日

忘れられた先駆者(DOL百物語 第四話)

§1§



「これは・・・・・酷いな・・・・」

ラドリックは辺りを見回すとそう呟いた。オスマン艦隊を撃破し、リラダン団長に別れを告げたラドリック達は、一路サントドミンゴを目指していた。そしてその航行中に「それ」を見つけたのだった。


ラドリック達が見つけた「それ」・・・・・それは、漂流している一隻の帆船だった。帆は破れ、索は切れ、船体には砲弾がめり込んだであろう穴が無数に開いていた。しかし、沈むまでには至らないようで、海流に流されているのだろう、少しずつ動いていた。ラドリック達は、その漂流船に船を近づけているのだった。

「一体何処の船でしょうねぇ・・・・・・」

ラドリックの横で、船を眺めていたディックが不思議そうに言った。

「こりゃかなり昔の船だな・・・・わしが若い時に作られた船じゃないか?」

ディックの言葉に工房長のモーガンが答えた。

「船の形は今で言うキャラック系だが、各所の作り方が今風じゃない・・・・それにあそこを見てみろ」

そう言うと、モーガンは船体の一部を指差した。そこには、喫水線よりかなり上であるにもかかわらず、海草がびっしりと巻きついていた。

「いくら漂流船だからといって、あの海草のつき方は異常だぞ?それに、あれだけの穴が開いてれば、キール(竜骨)にも影響があるはずだ、浮いてるのが不思議なぐらいだが・・・・・」

そう言いながら考え込んでいるモーガンを尻目に、ラドリックは横に来たエドに言葉をかけた。

「とりあえず、乗り込んでみよう。万が一にも生存者が居れば救助しなければならない」

「ですが船長・・・・流石に生存者は居ないと思いますがねぇ・・・・・」

ラドリックの言葉にエドは船を一瞥してそう言った。

「恐らくそうだろうが・・・・・もし、乗っていた人間の手がかりになるようなものでもあれば、遺族に持って帰るのが航海者の道ってものじゃないか?」

「・・・・・わかりやした、ではあっしとディックを中心に乗り込む奴を編成しましょう」

「ああ、頼む。準備ができたら教えてくれ」

エドの言葉にラドリックは頷くと、船長室へと歩を進めた。



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2006年08月28日

汚名

§1§




「貴官は確か・・・・・あの時Sanative=Vixen提督と一緒に居た・・・・」


聖ヨハネ騎士団の団長であるリラダンは、彼の前に立っている若者を見てそう呟いた。

「お久しぶりです団長。その際はご迷惑をおかけしました・・・・」

その若者・・・・ラドリックはそう言うと、リラダンに頭を下げた。

「いや、気にせんでくれ。貴官はよくやった。だが、あの時はSanative提督に助けられたな・・・・」

「ええ・・・・」

リラダンの言葉にラドリックは頷いた。あの時・・・・そう、オスマン艦隊を討伐すべく、リラダンから依頼を受けたラドリックはSanativeに応援を頼み、勇躍ロードス島沖に向かったのだが、結果は惨敗・・・最終的には疲れきったラドリック達をカンディアに残してSanativeが単独出撃し、オスマン艦隊を撃破したのだった。


「で・・・・今日は何の用かな?」

物思いにふけるラドリックにリラダンは声をかけた。

「失礼しました。海事ギルドの方でオスマン艦隊を討伐する者を求めていると聞きましたので参上した次第です」

「・・・・確かにギルドの方には適任な者が居ればこちらに寄越すように依頼をしておいたが・・・・・貴官をその任に当てるわけにはいかんな」

ラドリックの言葉にリラダンは答えた。沈黙するラドリックにリラダンは更に言葉を続ける。

「先ごろのオスマン艦隊との大海戦は知っておるな?」

「はい・・・」

「あの時も各国から選りすぐりの航海者達が集まり、何とかオスマン艦隊の南下を防いだ。しかし、オスマン艦隊は戦力を蓄え、再度の侵攻を狙っておる・・・・・ラドリックよ、貴官は一度オスマン艦隊に完膚なきまでに叩きのめされている・・・・オスマン艦隊を討伐するには、Sanative提督のような熟練の軍人でなければならん。だからこの任に貴官を当てるわけにはいかんのだ」

「リラダン団長」

ラドリックは俯いていた頤を上げると、まっすぐリラダンを見た。鋭い視線がリラダンを射抜く。

(ほう・・・・・いい目をしておるな・・・・・あのときとは違う)

リラダンはラドリックの視線を受け止めながらそう思った。そして、形の良い口ひげをしごきながらラドリックに問いかける。

「なにかね?」

「私にもう一度機会を与えてください。汚名を雪ぐ機会を・・・・」

「しかし・・・・・」

「ヨハネ騎士団の名を汚すような事は致しません。ですから是非とも・・・・」

「・・・・・・・・わかった、貴官に討伐を任せよう」

「ありがとうございますリラダン団長。このラドリック・ガーランド、一命に代えましてもオスマン艦隊を」

「だめだ」

「・・・・は?」

「命に代えてもなどと言うものではない、無理はするな、そして・・・必ず帰って来るのだ」

「・・・・・承知致しました」

ラドリックはリラダンに敬礼すると、リラダンの執務室をあとにした。




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2006年08月06日

再び戦いの海へ・・・・

「ラドリック・ガーランド・・・・よく貢献してくれましたね」

荘厳な空気が流れる謁見の間に、女王の声が響いた。女王の声が大きいのではない。謁見の間に漂う厳粛な雰囲気が他の者に物音を立てさせていないのだ。

「ラドリックよ、女王陛下はお前に更なる爵位を授与されるとの仰せだ。謹んで受けるように」

女王の隣に立つサセックス伯がラドリックにそう言った。

「ありがたき幸せ。このラドリック、イングランドの為に更に尽くす所存です」

ラドリックは緋色の毛氈の上に跪いて頭を垂れたままそう答えた。
ヨーロッパとインドを往復し、宝石輸送で瞬く間に資金を稼いだラドリックは、その大半をイングランドの同盟港に投資した。その功績により、今回の爵位授与となったのである。


「時にラドリックよ」

再び謁見の間に女王声が響く。

「そなたをこの謁見の間に呼んだのにはもう一つ理由があります」

女王はそう言うと、サセックスに視線を投げかけた。女王の視線を受けたサセックスはラドリックの方に向き直ると、手に持っていた紙を開き、言い放った。

「イングランド海軍予備役士官ラドリック・ガーランドに命ずる。女王陛下の勅命である。直ちに現役復帰し、軍務に付け!」





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2006年07月17日

喜望峰沖、波高し

「喜望峰沖にイスパニア私掠艦隊を見ゆ、注意されたし」


知り合いの軍人から送られてきた通信文にはその一言が書かれていた。

セイロンで特産品であるルビーを大量に買い付けたラドリック達は、ヴェネツィア私掠艦隊のセイロン封鎖網を間一髪のタイミングで突破し、インド洋を横断してタマタブに寄港し、一路ケープを目指していた。そして、ナタール沖を通過しようとした時にこの通信文が届いたのである。

ラドリックはその通信文を読むと、急遽ナタールに寄港し、ギムを情報収集に出した。そして、情報収集からギムが帰ってくると、船長室にエドとレイモンドを呼んで、ギムの報告を聞いた。


「ギム、どうだった?」

帰ってきたギムにラドリックが言葉をかける。

「やはりイスパニア私掠艦隊はケープ沖に展開しているようです。目的は不明ですが・・・・・・」

ギムの言葉にラドリックは頷くと、目の前にある机に広げられた航路図に目をやった。その航路図には何本もの線と円、そして注意書きが書き加えられている。

「船長、どうしやす?」

一心に航路図を見ているラドリックにエドが声をかける。

「Merchant roadならケープ前を強行突破という手もあるんだが・・・・・」

ラドリックは呟いた。

このインド行きにおいて、ラドリックは商用ジーベック「HMS Merchant road」を使わず、大量の資金を投じて、商用大型ガレオン「HMS Outskirts of the world」を購入し、それに乗ってきていた。Outskirts of the worldはMerchant roadに比べて搭載量が段違いに多く交易品も大量に積める半面、追い風では速度が出るが、向かい風では速度が出ない横帆の為、ナタール前からケープ沖に向かう向かい風には悩まされる事になる。その為、強行突破は不可能に近かった。

「ケープ沖を避けるには、このナタールから南に針路を取ってアガラス海盆に入り、そこから針路を西に取って、ケープ海盆を経由して南大西洋に抜けて追い風を受けて北上ずるコースがありますが・・・・問題は物資ですね」

レイモンドが航路図を見ながら言った。

「物資か・・・エド、物資を最大限積んでどれぐらい持つ?」

「そうですねぇ・・・・いつものようにケープに寄るつもりでソフィア嬢ちゃんと補給計画を立てたんで、持っても一ヶ月って所でしょうか?勿論、水を最優先にして、船員総出で釣りをしてですがね」

ラドリックの問いかけにエドが答える。そして、ラドリックはまた航路図に視線を落とした。

「ケープに寄るのも危険、迂回も危険・・・・・か」

ラドリックはそう呟くと、羽ペンを手にして航路図に線を書き込んだ。

「どちらも危険なら、私掠艦隊に会わない方を選ぶか・・・・エド、レイモンドは出港準備を頼む。準備ができ次第出航し、一路アガラス海盆を目指す!」

「アイ・サー!」

敬礼をラドリックに返して船長室を出て行く三人。ラドリックは三度視線を航路図に落とす。見つめる先には「Agulhas basin(アガラス海盆)」と書かれていた。






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2006年06月11日

転機


それは突然現れた。

冒険の依頼をこなし、数々の財宝を積んだ商用ジーベックHMS Merchant roadは、アレクサンドリアを出航し、東地中海を脱出すべく一路ベンガジを目指していた。
何故脱出なのか・・・・各国が結んだ不可侵条約で一時期安全海域になっていた東地中海だが、その条約の期限が切れた今、東地中海は私掠船の横行する危険海域に戻り、東地中海の各港はヴェネツィアとフランスの熾烈なる投資戦の中にあった。
そういう理由で自然と各国の私掠艦隊が横行する事となり、ラドリック達も十分警戒して航行している筈だった。


「前方より敵影!ガレアスが4隻です!」

警戒直に当たっていたロイが叫ぶ。夜明け前の薄暗い海を裂くように、その艦隊はMerchant roadを目指して一直線に進んできた。

「レイモンド!回避できないか!」

ラドリックがレイモンドを見る。しかし、レイモンドは無言で首を横に振った。

「くそ・・・・・・」

舌打ちをするラドリック。その間にもガレアスは左右に展開しながらMerchant roadを包み込むように迫ってきた。ガレアスのマストには、フランスの国旗がはためいていた。

「船長・・・どうしやす?」

「どうしようもないな、この風向きでは逃げ切れない・・・・かといって、Raging dragonならともかく、このMerchant roadでは・・・・・」

エドの言葉にラドリックは呟いた。
非武装にしたとはいえ、船員の多いアラビアンガレーであるRaging dragonであれば、白兵戦を行いながら活路を見出す事もできたかもしれない。しかし、交易船であるMerchant roadでは接舷されたら最後、拿捕されるのは目に見えていた。

「ラドリック様・・・・敵艦より信号です。『こちらはフランス私掠艦隊。貴艦は我が艦隊の包囲下にある。無益な抵抗をせず停船せよ、従わない場合は貴艦は海の藻屑となる事だろう』です・・・・」

ギムが敵船からの通信文を手にラドリックの元へ現れた。気がつけば、Merchant roadはガレアスに四方から包囲されていた。

「・・・・・・・エド、停船しろ・・・」

ラドリックはそう言いながら床に視線を落とした。



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2006年06月04日

アガメムノンの仮面(後編)

「おらぁあ!!」

一瞬バヌースに視界を奪われたブル・ハーンであったが、視界が元に戻るとすかさずSanativeを切りつけた。尋常ではない膂力から繰り出されたタールワールの一撃がSanative襲う。

「・・・・・甘いな」

受ければ致命傷になるであろう斬撃を、Sanativeは後ろに下がりながら避けた。

「避けるのはうまいようだな、しかしこれならどうだ!」

ブル・ハーンは、Sanativeを連続で斬りつける。しかし、Sanativeはその斬撃をことごとく避けてみせた。しかも、無駄な動きが一つもない。

「うおおおおおお!!」

業を煮やしたブル・ハーンは、頭上でタールワールを風車のように回して気合を入れると、大きく踏み込んで斬撃を繰り出した。Sanativeはまたも後ろに下がって避けてみせたが、避け方が足りなかったらしく、燃えるような赤毛が数本、タールワールに斬られて宙を舞った。

「やはり武器なしでは避けることしかできないじゃねぇか・・・・さっさとおねんねしちまいな!」

更に斬撃を繰り出すブル・ハーン・・・・・しかし、Sanativeは皮一枚の差でその斬撃を避けた。

「・・・・飽きた・・・・遊びは終わりだ」

「何だと!!」

Sanativeの呟きにブル・ハーンが気がついたときには、Sanativeの体は電光石火の速さでブル・ハーンの懐に入り込んでいた。そして、渾身の力を込めたSanativeの拳が、驚くべき速さでブル・ハーンの鳩尾に叩き込まれる。

「ぐはぁ!!!」

凄まじい絶叫と共に多量の吐瀉物を撒き散らしながらブル・ハーンは地面と不本意な口づけをした。そのままピクリとも動かない・・・どうやら意識を失ったらしかった。

「さあ・・・お前達の首領はこのとおりの有様だ・・・次は誰が相手をしてくれるのかね?」

ブル・ハーンを一撃で仕留めたSanativeは、ブル・ハーンの手下達をその隻眼で睥睨しながらそう言った。

「ひ・・・・ひぃ!!」

一人が緊張に耐えられずにSanativeに背を向けて逃げ出す。ブル・ハーンの手下達は、蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ去った。

「おい・・・・首領を置いていっていいのか?」

Sanativeはそう呟くと、ブル・ハーンを足で蹴った。しかし、ブル・ハーンはピクリとも動かない・・・

「まあいいか」

Sanativeは脱ぎ捨てたバヌースを着ると、ラドリック達の方を向いた。

「ラドリック卿、レヴィ嬢、待たせたな。久しぶりに運動もできたことだし、そろそろ探索を再開するとしようか」


Sanativeはそう言うと、廃墟の方に向かって歩を進めた・・・





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2006年05月29日

アガメムノンの仮面(前編)

「てな訳で・・・・俺達はあんた達と似たような依頼を受けてる冒険者をそこまで案内するんだが・・・・目的地に着くとそいつらは決まって俺達に賃金を渡して帰るように言うんだ・・・まあ、俺達もそこに居る理由が無いから貰うもん貰ったら帰るんだが・・・・」


その船乗りの話に、レヴィローズは思わず息をのんだ。ここはアテネの酒場・・・レヴィローズはラドリックやSanative=Vixenと共に、ホメロスが書いた叙事詩イアリスが物語ではなく史実であるという確証を探すべく、トロイ戦争におけるギリシャ側の総大将であるアガメムノンについての情報を集めるためにアテネに来ていたのだった。

「そ・・・・それで、貴方の案内した冒険者の方々は?」

レヴィローズは恐る恐る船乗りに続きを聞いた。

「さぁなぁ・・・・街に帰ってきたって噂も聞かないし・・・・もしかしたら俺達の案内した所に真新しい死体となって山積みになってるのかもしれないぜ?あんた達も気をつけたほうがいい・・・・」

「お兄様・・・Sanativeさん・・・・まさか私たちも騙されてるんじゃ・・・・」

レヴィローズはラドリックとSanativeの方を向き、不安げな表情で二人の顔を見た。ここに来る前に寄ったマルセイユの冒険者ギルドのギルドマスターが、同じような依頼を受けた冒険者達が一人も報告に来ないと訝しがっていたのを思い出したのだ。

「う〜ん・・・その可能性も無いとは言えませんが・・・・取りあえず商会長と私が居ればレヴィさんの安全は確保できると思います。どうです?商会長?」

ラドリックの言葉にバヌースに身を包んだSanativeは静かに頷いた。

「うむ、大丈夫だろう・・・・まあ、今の俺はしがない冒険者だから、荒事は英国紳士たるラドリック卿にお任せするが?」

「商会長・・・・勘弁してください・・・・」

「うふふ」

ラドリック達のやり取りを聞いて、レヴィローズは心の中の不安が無くなっていくのを感じた。自然と笑みがこぼれる。

「どうやらレヴィ嬢も安心したようだし、ラドリック卿、そろそろ行くとするか」

「了解です商会長」

Sanativeとラドリックが席を立つ、そして二人は酒場の出口に向かった。

「ありがとう船乗りさん、これはお礼よ」

レヴィローズは船乗りの手に金貨を握らせると、ぺこりと頭を下げて酒場を出て行くラドリック達を追った。船乗りは、情報料にしては多すぎる金貨を握り締めながら酒場を出て行くレヴィローズに視線を送った。


(お嬢さん・・・・あんた達の無事を祈ってるぜ・・・・)




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2006年05月07日

一夜の夢


「お兄ちゃん・・・・まだ見つからないの?」

夕日が大地を紅く染める・・・・額に浮いた汗をハンカチで拭きながら、ソフィアはラドリックに言った。

「あのなぁソフィア・・・・遺跡や財宝探しって物は、美術品なんかと違って、ある所がちゃんとわかってないものが多いんだ。だから探索には時間がかかるんだよ」

もう何度目だろう、ラドリックは探索の手を止めてソフィアに言った。ラドリックはナポリのギルドマスターから、ビザンツ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世を支えたという皇妃テオドラについて調べるという依頼を受けて、エドやソフィア、ディック達と共に、サロニカの奥地に来ていたのだった。

「でももう二日も同じ場所を行ったり来たりしてるよ?大体の場所が分かってるんだったらもう見つかってもいいんじゃない?私もう疲れちゃったよ」

ソフィアが近くの木の根っこに座り込みながらそう言った。ラドリックは今回も少人数で行くつもりだったのだが、ソフィアがついて来ると言い張った為、万が一の事も考えてエドやディックも連れてきたのだった。

「確かにソフィア嬢の言うとおりですな。もう日も落ちてきたことですし、今日はここで野営しては如何でしょうか?」

通訳として同行していたミハイルがそう言った。

「・・・・そうだな、今日はここで野営しよう。みんな、野営の用意をしてくれ!」

ラドリックがそう言うと、全員が野営の準備に取り掛かった。ラドリックは木の根っこに座り込んだソフィアの元へ行くと横に座った。

「どうだソフィア、冒険も結構大変だろ?このままではあと何日かかるか分からない。どうだ?ディックを護衛につけるから先に帰らないか?」

「冗談じゃないわ、そうやって私を追っ払おうとしてもそうはいかないんだからねお兄ちゃん」

ソフィアはそのラドリックの言葉に首を振りながらソフィアは言った。

「そんなつもりは無いがな・・・・しかし何でついてこようと思ったんだ?」

「それは・・・・ミハイルさんに聞いたの。テオドラって人は平民の出身だったって」

ソフィアはラドリックの顔を見ながら言葉を続けた。

「平民の出で皇帝の奥さんになれた人ってどんな人だったのかなって思って・・・・ちょっと興味がわいたから」

「なるほど・・・・確かに皇妃テオドラは平民出身だったらしい。昔はサーカス団で舞姫をしていて、その舞は右に出るものがいなかったそうだ。ユスティニアヌス1世はテオドラに一目惚れして、当時の法律を改正してまでテオドラを皇妃に迎えたらしい」

「そうなんだ・・・・・」

ラドリックの説明を聞きながら、ソフィアは考えていた。法律を改正してまで妻に迎えたい女性とはどんな人だったのだろう・・・・・

「船長、ソフィア嬢ちゃん、野営の準備ができましたぜ!」

野営の準備を整えたエドがラドリック達に手招きをしていた。ラドリックとソフィアは立ち上がると、エドの方に歩いていった。




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2006年04月22日

炎の宿命(さだめ)

「ルアンダはまだ見えないか!!」

ラドリックは苛立っていた。ラドリックは商会長Sanative=Vixenの依頼を受け、ライザ・ミドルトンと海の旅団の司令官を探し出すべく一路ルアンダを目指すManonの護衛として、リスボンを出航したのだが・・・・

「サントメを過ぎてもう二日がたちます、そろそろだと思いますが・・・・」

横に立つエドが心配そうな顔をしてラドリックを見ていた。途中嵐により舵を損傷したRaging dragonは、一旦サンジョルジュに寄港して修理を受けた。ラドリックは修理が完了してからの同時出航をライザに進言したのだが、焦るライザはラドリックの進言を用いず、フレデリクやManonと共に先に出航してしまったのだった。

「・・・・商会長の情報では、最近ルアンダ沖にはイスパニアの警備艦隊がうろついているらしい。商船に偽装してる限り心配はないと思うが・・・・嫌な予感がする」

ラドリックはそう呟いた。胸の中に沸き起こる不安がラドリックの心を支配する。ラドリックはリスボンを出航する前にフレデリクが言った言葉を思い出していた。


「俺達の行く手を阻むものがいれば撃破してでもエグモント達と合流してみせる」


「こちらから仕掛けなければいいが・・・・」

ラドリックがそう呟いた時、メインマストの上で警戒直に当たっていたロイが叫んだ。

「前方に艦影!数は・・・・・6隻です!」

その叫びにラドリックは船首方面を見た。前方では6隻の艦影が入り乱れていた。そして・・・・砲声がラドリックの耳に聞こえた。

「く!!不安が的中したか・・・・ディック!最大船速だ!全員第一種戦闘配備!」

速度を上げたRaging dragonは、ルアンダの前で死闘を繰り広げる艦影の群れに一直線に突入して行った。






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2006年04月16日

決意と痛みと

「ふぅ・・・何も無いってのも退屈なもんだなぁ・・・」

ビスケー湾を北上するRaging dragonの船上でエドは呟いた。
ラドリック達はリスボンで受けた依頼のために、一路ロンドンへと向かっていた。ハンブルグからロンドンへ帰ってきているエルウッドを迎えに行くと理由もあったのだが・・・

「しかしおやっさん、うちの船長はいつになったら軍人に復帰するんですかねぇ?俺はもう不満で不満で・・・」

エドの横に立って周囲を見回していたディックがエドに言った。確かに今のRaging dragonは武装をすべて取り外し、ひたすら冒険者ギルドの依頼をこなす為に東奔西走している。甲板長であるディックとしては、仕事が無いのが不満だったのだ(まあ、甲板長の仕事は戦闘だけではないのだが・・・)。

「さぁな、船長は一度決めたことはよっぽどの事が無い限り翻さない性格なのはお前も知ってるだろうが」

「だけどおやっさん、今日も移動明日も移動って生活はいい加減飽きたぜ、たまにはドンパチをやりたいと思いませんか?」

「そりゃ俺も思わないでは無いがな・・・・この船の船長は坊ちゃんだ、俺達は坊ちゃんの意思に従うだけだ」

「けれどおやっさん・・・」

更にディックが言おうとしたその時、メインマストに上がっていたロイが大声を上げた。

「後方から急速に接近してくる船があります!艦種はガレオン級!」

「敵襲か!」

その声に二人は一斉にメインマストを見上げた。

「いえ違うようです、識別旗はイングランドの物です!」

「なんだよ・・・せっかくドンパチが出来るかと思ったのに」

ぼやくディックをエドはたしなめた。

「おいおい、今のRaging dragonの兵装でガレオン相手に勝てると思うか?」

「まあそりゃそうですが・・・・」

エドはディックにそう言うと、船尾方向を見た。確かにガレオンがRaging dragonに向かって接近してくる。

「ロイ!万が一ぶつかると面倒だ、あちらさんに針路を変えてもらうように信号を送れ!」

「了解!」

エドの言葉にロイが信号を送る。しかし、後方のガレオンは信号を無視して接近してくる。

「おやっさん!信号を送っても返事が来ません!」

「なにぃ!あっちの船の野郎はめんたまついてんのか!」

エドはそう叫ぶと再び船尾方向を見た。後方のガレオンはその巨大な船体を物ともせず、高速で接近していた。

「レイモンド!後ろの馬鹿野郎はこっちにぶつける気らしい、回避運動を頼む!」

「了解!」

レイモンドが舵を切ると、Raging dragonは大きく右に傾いた。後方のガレオンはそのまま直進し、Raging dragonと併走するように速度を落とした。

「馬鹿野郎!何処の所属の船だ!」

お互いの顔が見える位置まで接近してるガレオンに向かって、エドは叫んだ。ガレオンの船員は薄ら笑いを浮かべたまま返事をしない。その態度に頭に来たディックが叫ぼうとしたその時、ガレオンの甲板にバヌースを着た一人の男が現れた。

「あ・・・・あんたは・・・・!?」

あまりの事に呆然とするエド達に、その男は笑いながら言った。

「相変わらず血の気が多いなエド」

「あ・・・いや、そりゃあんなことされれば誰だって・・・」

しどろもどろに答えるエドに男は言った。

「まあこちらも悪ふざけが過ぎたと思っている。しかし、冒険ばかりしていても有事の時の腕は落ちていないようで安心したぞ。いまからそっちに乗り移るから前をあけてくれ」

「ちょ・・ちょっと待ってください、オールをしまって艦を近づけます。いや、お互い停船して・・・」

「必要ない」

男はそういうと、舷側から飛んだ。そう・・・・飛んだと表記するのが正しいだろう・・・・男はバヌースの裾をたなびかせ、まるで鳥が木に止まるようにRaging dragonの甲板に舞い降りた。

「ラドリック卿は艦長室か、いや、案内は要らん。この艦種は乗りなれてるからな・・・・勝手はわかる」

その男はそう言うと、艦長室に向かって歩を進めた・・・


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2006年01月27日

戦士達の邂逅 §後編§

「エド!ディック!!Julian卿は俺が抑えた!一気に船内を制圧しろ!!」


剣撃の音と怒号が響くSea CentipedeUの甲板上で、ラドリックはエド達に聞こえるように声を張り上げた。

「了解でさぁ!第二斬り込み隊は俺に続け!」

「第一斬り込み隊は俺と一緒だ、一気に船内を制圧するぞ!!」

ラドリックの声にエドとディックが反応し、即座に行動を開始する。そして、静寂が甲板を支配した。

「まさかラドリック卿自身が囮とは・・・・・これはしてやられましたね・・・・」

端正な顔を歪めながら必死にラヴュリスを押し返そうとするJulianを見ながら、ラドリックはラヴュリスに力を込める。

「本来なら貴方との一騎打ちで決着をつけたかったんだが、陸上ならともかく船上ではそうも行きませんからね」

「・・・・そうですか・・・・ラドリック卿は何でも己の力で解決しないと気がすまない性分だと思っていましたが・・・・・認識を改めないといけませんね」

Julianはそう言うと、甲板に膝をつきながらシュパイツァーサーベルに力を込めた。ラヴュリスとシュパイツァーサーベルが擦れ合い、ギリギリと音を立てる。

「Julian卿、いつもならそうなんですよ、でも今回は仲間達の力を借りないと貴方には勝てないと思ったんです。もう少し・・・・船が制圧できるまで付き合っていただきますよ!」

そう言うと、ラドリックは更に力を込めようとした。しかしその時、Julianから意外な言葉を聞く。

「・・・・・・さあ・・・・それはどうでしょう?何事も最後までわからないものですよ?私も部下達を信じてますからね・・・」

「な・・何!?」

Julianの言葉が終わるか終わらないかと同時に、静寂に包まれていた甲板が再び剣撃の響きと怒号に包まれた。




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2006年01月22日

戦士達の邂逅 §中篇§

「お兄様・・・・気をつけて」

併走する船からレヴィローズがラドリックに声をかけた。

「レヴィさん御心配なく。では」

ラドリックはレヴィーローズに敬礼を返す。それと同時に併走していたレヴィローズの船がRaging dragonを離れていく。

「ギム、ライル卿からの合図はまだか?」

ラドリックは振り向くと、ギムの方を見た。

「まだのようですが・・・・・いや、信号が来ました!」

ギムの声にその場に居る全員に緊張が走る。

「よし、全員第一種戦闘配備!合図の空砲があり次第、Sea CentipedeUとの戦闘に移る!」

「アイ・サー!」

ラドリックの指令と同時に全員が部署に散る。そして数分後・・・・轟音を合図として、戦闘は始まった。




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2006年01月17日

戦士達の邂逅 §幕間§

「これで模擬戦大会を終了します。皆さんありがとう!」

ボルドーの教会にスーザ嬢の声が響き渡る。そして拍手が巻き起こり、模擬戦大会は盛況のうちに幕を閉じた。

俺はJulian卿の方に歩み寄ると、Julian卿に声をかけた。


「Julian卿・・・・ランク2の準優勝おめでとうございます」

「ありがとうございますラドリック卿、たまたま運がよかっただけですよ」

俺の声に振り向いたJulian卿がそう答える。パイレーツコートを隙無く着込んだ姿は、歴戦の軍人の風格を漂わせている。

「Julian卿・・・・いつかの約束を覚えていますか?」

「約束・・・・・?」

「そう、ストックホルムの酒場での約束ですよ」

「ああ、あの時の・・・・・」

Julian卿はそう呟くと、俺の顔を正面から見据えた。穏やかだった眼光が鋭さを帯びる。

「お互い船の修理があるでしょうから、3時間後でよろしいですか?」

「承知」

俺は短く答えると、Julian卿に背中を向けてボルドーの教会の出口へと向かった。胸に消える事の無い炎を燃やして・・・・・

(やっとあの時の約束が果たせる・・・・・・)


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2006年01月09日

戦士達の邂逅 §前編§

「エルウッド!ライル卿の『ガルシス Ω RC』との距離が400になったら斉射三連!」

「ヤー!」

「レイモンド!斉射後に回避運動10秒だ、いいな!」

「アイ・サー!」


ボルドー沖にラドリック達の声が響く。ラドリック達は商会メンバーのスーザ嬢が主催を務める模擬戦に出ていた。ランク2というカテゴリに出場したラドリック達は、目の前の船・・・・ライル卿の指揮する商用大型キャラック『ガルシス Ω RC』と死闘を繰り広げていた。

模擬戦とはいえ、使うのは実弾である。乗組員達の表情に緊張が見て取れた。


「ガルシス Ω RCとの距離が400を切りました!」

「よし、こちらの大砲の威力を思いしらせてやれ!ファイエル!!」

測量担当の下士官の報告を受け、エルウッドがドイツ語で号令をかける。間髪をおかずに各砲門からガルシス Ω RCに向けて、轟音と共に砲弾が飛ぶ。

それと同時に、レイモンドは舵を切った。『Raging dragon』の船体が大きく弧を描いて旋回する。

「着弾を確認!メインマストが損傷した模様です!」

望遠鏡でガルシス Ω RCを見ていたロイがラドリックに報告する。ラドリックはその報告に頷くと、声を上げた。

「油断するなよ、すぐに敵の砲撃が来るぞ!!」





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2006年01月02日

偉業の先駆者(ラドリック)

「・・・・?何だお前達は?」

俺はそういうと、前にいる男達を見た。

アテネのギルドでアレクサンドロス大王の父、フィリッポス2世の残したものについての調査を受けた俺とギムは、サロニカの奥地、マケドニア地方にある古代遺跡、ヴェルギナに来ていた。

そしてヴェルギナ遺跡の内部でフィリッポス2世のものと思われる莫大な副葬品を発見した俺は、その一部を持って遺跡を出ようとしたんだが・・・・小一時間ほど遺跡の内部を調べて外に出てきた俺達を待っていたのは武器を持った男達だった。

恐らくこの辺を縄張りとする山賊の類だろうその男達は、手に武器を構えていた。

「何だとは御挨拶だな、ここは俺達の縄張りだ。勝手に入ってきたのはお前だぜ?」

首領格と思われる男が俺に話しかけてきた。

「それは悪かったな、今出て行くから勘弁してくれ」

そう言ってその男の横を通り過ぎようとした俺の前にかざされる剣・・・・一点の曇りの無い鋭利な刃に俺の顔が映る。

「おっと、待ってもらおうか。その財宝は置いて行ってもらおう」

「何故だ?これは俺達が発見した物だ。鍵の錠前は古かった・・・・あんた達がかけたものじゃないだろう?」

「そんなことは関係ない、縄張りにあるものは全て俺達の物だ。例え草木の一本でもな」

男はそういうとニヤリと笑った。

「そういうことか・・・・・ならば渡すのは断る」

「ほう?この数を相手に帰れると思ってるのか?」

「怪我をするのはそっちかも知れないぞ?」

「言ったな・・・・なら遠慮は要らんな、野郎ども!やっちまえ!!」

そして遺跡は戦いの場となった。


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posted by ラドリック at 19:58| Comment(4) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月29日

新しき翼


「これが商用ジーベックか・・・・・」

造船所のドックに悠然と浮かんでいる船を見上げて、ラドリックはそう呟いた。

鋳造修行を終えたラドリック達は、インド最大の都市カリカットに来ていた。
目的はふたつ・・・・インドの特産であるサファイヤやルビー、胡椒等の交易品を買い付けることと、新しい船、商用ジーベックを受け取る事だった。

先のカナリア沖の逃走劇で交易船である商用サムブーク「HMS Merchant road」の受けたダメージは大きく、修理を行っても長期の使用に耐えられないと造船技師であるモーガンは判断した。その為、カリカットに新しい船を注文に来たのだった。


ジーベック

インド地方で良く見られる縦帆の帆船「サムブーク」の上位に位置する帆船で、その移動力と積載能力は目を見張るものがある。特に商用ジーベックは積載量こそガレオンなどの帆船に一歩譲るものの、帆を縦帆や横帆に換装する事によって、向かい風でも移動能力を損なわれない。その分値段も張るが、ラドリック達は何とか資金を用意したのだった。


「これが俺達の船に・・・・」

ラドリックはジーベックを見上げながらそう呟いた。

「船長、向こうの造船技師とは話をつけてきた、船倉を最大限増やしてもらうようにしたぞ」

その声の方にラドリックが振り向くと、そこにはモーガンが立っていた。

「ああ、すいません工房長・・・・で、Merchant roadはどうなりますか?」

「Merchant roadはこっちで引き取ってくれるらしい・・・・と言っても、外洋にはもう出れんからな・・・・最悪の場合は解体になるかもしれんな」

その言葉を聞いたラドリックの顔に苦渋の表情が浮かぶ・・・

「あの時・・・・ガレーを防ぐ為にMerchant roadを盾に使わなければ良かったんでしょうか」

「いや、わしはあの時の船長の判断は間違ってないと思っている。それに交易を手広くやるためには、いずれ新しい船に乗り換えなければならん。Merchant roadは頑張ってくれたよ船長」

モーガンはそう言うと、ラドリックの肩を叩いて造船所に戻っていった。




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posted by ラドリック at 20:04| Comment(2) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月13日

追う者と追われる者

それは突然現れた。


「すまんにーちゃん、このままだと補足されるかもしれん」

前方を航行する船から手旗信号が送られてきた。

インドで金庫を増やしてもらったあと、俺とベネットはインドからの船に土産を満載して帰路に着いていた。

インド洋からケープ沖、南大西洋とベネットの熟練した測量技術を頼りに、ベネットの乗艦の冒険サムブークconduzida a estrelaと俺達の乗るHMS Merchant roadは無寄港航海を続けていた。道中何事もなくカナリア沖に入り、国際法で決められている安全海域までもう少しという所でその船は現れた。

船は二隻、後方と左前方・・・俺達の船を挟むように併走している。


「ありゃあイスパニアの私掠艦隊ですぜ、しかもガレーが二隻・・・・・この向かい風じゃあベネット船長はともかく、あっし達は補足されるかもしれやせんね・・・」

望遠鏡で相手の船を見ていたエドがそう呟く。

「イスパニアの私掠艦隊は熟練の船長が指揮してますからね・・・・しかもこの艦隊は腕がいい・・・・ぴったりとついてくる」

エドの呟きにレイモンドも答える。

「ベネットは安全海域まで逃げるつもりでいるようだ、拿捕されれば積荷は全部奪われるだろうしな、俺も捕まるのはしょうに合わん」

ベネットからも同様の通信が来ていた。しかし、あっちはれっきとした軍艦、こちらは非武装のサムブークが二隻・・・・逃げ切れるものだろうか・・・・

と、考えていると号砲と共に左前方を航行するガレーから通信が入った。


『停船せよ、然らずんば攻撃する』


「どうします?」

エドがこちらを向く。

「拿捕されるのがわかっているのに止まれと言って止まる奴はいない、全員戦闘配置!・・・・と言っても非武装だから大砲の一発も撃てんがな・・・」


そして戦いは始まった



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posted by ラドリック at 20:31| Comment(11) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月19日

決着 §後編§

死闘.JPG

ギザのピラミッド・・・・・多くのファラオが眠る墓所の前に三人の男が居た。

一人はコルセアコートを身に纏い、バイコルヌを被っている。ファラオ達の墓所の番人・・・ラミアだった。

一人はやはりコルセアコートを身に纏っている。英国の軍人ラドリック・ガーランド。そしてもう一人はガーランド家の密偵、ギムレット・ウォーカーだった。

「ほぅ・・・・誰かと思えばギムとあの時の若造か、今日は何の用だ」

ラミアはラドリックを見据えたまま言う・・・その目は明らかにラドリックを嘲笑っていた。


「ラミアよ、まずはむやみにファラオの墓所に立ち入ろうとした無礼を謝る・・・そして貴方に礼を言う」

「何?礼だと?俺が貴様に何をしてやった?」

ラドリックの言葉に戸惑うラミアにかまわずラドリックは言葉を続けた。

「俺は貴方のお陰で戦士とは何たるかを身をもって知った。その事に対しての礼だ」

ラドリックはそういうと、ラミアに対して頭を下げた。

「・・・貴様は馬鹿か?あの時俺が貴様にした仕打ちを忘れたのか?もしそうだとしたら貴様は本物の馬鹿だ」

「忘れてはいない・・・だからここに来た」

ラミアの嘲弄にも動じず、ラドリックは言葉を続けた。

「これで俺の気が済んだ。ラミアよ・・・・俺は貴方に決闘を申し込む・・・・あの時の屈辱を晴らす為に!」

ラドリックはそういうと、ラミアに手袋を投げつけた。

「・・・・なるほど、そういうことか。良いだろう、貴様の力量が何処まで上がったか・・・・この俺に見せてみろ。そして・・・・今度こそ地獄に落としてやる!!」

ラミアはそう言うと、ギムの方を見た。

「良いなギム、これは決闘だ、この若造が望んだものだ。例えこの若造が俺に負けたとしてもこの前のように見逃しはしない・・・・手出し無用だ!」

燃えるようなラミアの視線を受けたギムは、一瞬ラドリックを見てからラミアを見た。

「勿論です・・・・この戦い・・・私はラドリック様が勝つと信じていますから」

「ほぅ・・・ならばその目にしかと焼き付けるが良い!!俺には無いものを何の苦労もせずに得た若造が、屈辱に塗れて死ぬ姿を!!」


そして戦いは始まった。


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posted by ラドリック at 22:55| Comment(9) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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