2007年07月19日

霧の街に潜む闇(LSL)

§1§



霧の街ロンドン・・・・その名に違わぬ深い霧の中を、一人の女性が走っていた。彼女は何かに怯える様に何度も後ろを振り向きながら、ただひたすら走り続ける。

(こんなことなら早く帰ればよかった!)

彼女も最近ロンドンに流れる吸血鬼の噂は知っていた。「燃えるような赤毛の吸血鬼が、夜な夜な女性の生き血を吸うためにロンドンを彷徨っている」と・・・しかし彼女は本気にはしておらず、ついつい友達との会話に夢中になって帰るのが遅れたのだ。

(まさか・・・・まさか本当に居たなんて!)

彼女は後ろを気にしながら更に走った。既に自分がどこを走っているかもわからない。ただ後ろから迫ってくる気配から逃げる為に走り続けた。

「!!」

走り続けていた彼女の足が止まった・・・入り込んだ路地が行き止まりだったのだ。彼女の目の前にあるのは高い壁・・・・そして、彼女はその壁を背にするように振り向いた。

「来ないで!」

夜の闇と深い霧によって、彼女を襲うべき吸血鬼の姿は見えない・・・しかし、霧に包まれていてもわかる圧迫感が、彼女の心を揺さぶった。そして・・・・霧の中から緑のコルセアコートに包まれた何かが現れる・・・・

「いやぁぁあああ!!!」

そして、彼女の悲鳴は夜の闇と深い霧に隠された・・・・・



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2007年06月24日

追憶

§1§



「そう・・・貴方が私の最愛の人を殺したからです」


サラの言葉にラドリックは凍りついた。そして、呻くように呟く・・・・


「俺が貴方の最愛の人の命を奪ったと?」

「ええ・・・そうです」

ラドリックの呟きにサラが答える。

「そう、貴方は私の愛しい人を・・・そして、我が部族最強の者であったあの人を殺したのです」

その言葉にサラの後ろに居たギムの表情が変わる。そして、ラドリックは再び呻くように呟いた。

「部族最強の男・・・・まさか・・・・貴方の愛しい人とは・・・」

「そう、私の愛しい人・・・許婚の名はラミアと言います・・・・」




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2007年06月02日

復讐の刃

§1§




「大理石は商館の方に運んで!仕入れてきた鉄鉱石と麻生地は奥の船倉に!」

ソフィアは書類を片手に持ちながら、交易品を運ぶ水夫達に矢継ぎ早に指示を出していた。アレクサンドリアでサラを船に向かえたラドリック達は、サラの部族の追跡を回避する為にアレクサンドリアを出航し、途中アテネに寄港して交易品を仕入れながら、ラドリックが所属する商会である「CAFE-de-Genova」の商館があるチュニスへ寄港したのだった。

「ソフィアさん、この仕入れ発注書なのですが、目を通したとら不備がありましたので修正しておきました」

「ああ、サラさんありがとうございます」

「では私はこれを持って交易所の方に行ってきますね」

「お願いします。護衛にはディックをつけますので」

「ありがとうございます。それでは」

サラは手にした書類をチャドリの裾にしまうと、ソフィアとラドリックに一礼して、ディックの待つ方へと歩いていった。

「どうだソフィア、サラさんは?」

「もの凄く助かってるわ。お兄ちゃんの100万倍役に立ってる」

「そ・そうか・・・・」

ソフィアの言葉にラドリックは頭を掻いた。サラを航海士として迎えた時に、ソフィアはサラを自分の補佐として雑用を手伝ってもらうつもりだった。しかし、サラは交易商である叔父の手伝いをしていたこともあり、雑用だけではなく商売上の様々な事にも素養を見せ、この一ヶ月余りの航海でソフィアにはなくてはならない存在になっていたのだった。

「流石に交易商の叔父さんの手伝いをしてただけあって、商売の基本をしっかり叩き込まれてるみたい。お陰様で私もかなり楽ができるわ」

「そうか・・・・良かったなソフィア」

「ええ、もしサラさんが良ければ、このままこの船にずっと乗っていて欲しいぐらいよ」

「ああ、そうなるといいな・・・・・じゃあ俺も所用を済ませてくるか」

ソフィアの言葉にラドリックは頷くと、舷側の方へ歩き始めた。

「所用って何があるの?」

「ああ、たまたま商館にベネットやjulian卿が来てるらしいんでな。久しぶりに会って話をしてくる」

「船の仕事はどうするのよ!」

「積荷の管理に関しては俺がいても役に立たないだろ?作業が全部終わったら、みんなには半舷休息を与えてやってくれ」


歩き始めた自分に問いかけるソフィアに手を振って見せながら、ラドリックは舷側へと歩いて行った。

「もう・・・・お兄ちゃんったら・・・・・」

ソフィアは頬を膨らませながらそう呟くと、自分の仕事に戻っていった・・・・


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2007年05月26日

新たなる出会い

§1§


「ここは相変わらず暑いな・・・・カリブとは違った暑さだが・・・・」

「そうですね、乾いた暑さというやつでしょうか」

ラドリックはバヌースの首元をくつろげて風を送り込みながらエドに言った。間一髪でナッソーを脱出したラドリック達は、ナッソーの内部情報をグレッグ男爵に報告した後、交易の為に東地中海のアレクサンドリアに来ていた。本来アレクサンドリアはオスマン帝国の領土の為、異教徒であるラドリック達は入港できないのだが、蛇の道は蛇の言葉の通り、出航所の役人にいくばくかの付け届けを贈ることで半ば公然と入港することができたのである。

「しかし・・・・これだけ砂煙がひどいと、カリブにいるときのような格好はできないな」

「そうですねぇ、流石にバヌースを脱ぐってわけにも行きませんしね」

ソフィアが交易所に行っている間に所用を済ませたラドリックとエドは、情報収集も兼ねて休憩所に向かっていた。イスラム教徒は酒を飲まない為、酒場というものがオスマン帝国にはなく、水タバコや茶を飲む場所としての休憩所が酒場の役割を果たしているのである。

「でも不思議ですねぼっちゃん」

「何がだ?」

「イスラム教徒って奴は、豚や牛の肉は食わないし酒も飲まないっていうんですぜ?何が楽しみで生きてるんだか・・・・」

「この世界の人間が全員エドのように飲んだくれてる訳じゃないんだよ。それにイスラム教徒は戒律で酒や羊の肉以外の肉を食べてはならないんだそうだ。ほんとは食べたり飲んだりしたいのかもしれないぞ?」

「あっしはキリスト教徒で良かったですよ。酒が飲めない世界なんてまっぴらごめんでさ」

「まあ、そうだろうな・・・・・ん?休憩所の方が騒がしいぞ?」

そう言って肩をすくめるエドにラドリックは苦笑しながら頷く・・・その時、休憩所の方から複数の人間の怒鳴り声が聞こえてきた。

「喧嘩・・・・ですかね?」

「わからんが・・・・とりあえず行ってみよう」

ラドリックはそう言うと、エドを促して休憩所の方へ向かった・・・・



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posted by ラドリック at 01:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月14日

ある猫の一日(番外編)

§1§




(にゃ・・・・もう朝かにゃ・・・・?)

船室の窓から暖かく漏れる日差しを浴びにゃがら、我輩は目を覚ましたのにゃ。

我輩のにゃまえはウィル、イングランド所属の船Band of lightに住んでる猫で、チャームポイントはぴんと張った尻尾なのにゃ。

(さて、今日も日課の散歩をするかにゃ・・・・)

我輩は、背伸びをしにゃがらそう思ったのにゃ。我輩の日課は船内の散歩、飼い主であるソフィアの代わりに船内を見て回るのにゃ。

(今日はどんな事があるのかにゃ・・・・・?)

我輩はドアの隙間をすり抜けにゃがら、廊下に出たのにゃ・・・


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2007年04月28日

脱出

§1§




「こいつらは海賊なんかじゃない!イングランド海軍の密偵だ!」


ハイレディンの影武者だった男がラドリック達を指差しながら叫ぶ。その声に周囲の海賊達が一斉に立ち上がった。

「なんだって!」

「よくもここまで入り込んできやがったな!」

「簀巻きにして鮫の餌にしてやる!」

口々に罵声を浴びせながら得物を構える海賊達を向こうにまわしながら、ラドリックとディックは周囲を見回していた。

「まずい事になりましたね・・・・船長どうします?」

「どうするといったって・・・・取り合えず・・・」

ラドリックはそう呟くと、腰のベルトに手挟んでいた短銃を抜き放ち、空に向かって撃った。その音に、一瞬海賊達が身を竦ませる。

「取り合えず逃げるぞディック!」

「了解!」

ラドリックはディックにそう言うと、ハイレディンの影武者だった男に向かって走り出した。ディックもそれに続く。

「なっ!?」

突然の行動に驚く影武者の横をすり抜けると、ラドリック達は目の前の林に向かった。

「くそ・・・・馬鹿にしやがって・・・・おい、追いかけるぞ!」

不意を衝かれた影武者は配下に声をかけると、ラドリック達のあとを追いかけて林に向かった。酒場にいた海賊達も大半はあとに続いたが、一部の者はテーブルに座ったまま動かなかった。そして、その中の一人が林の方を見ながら呟いた。

「・・・・提督、どうします?」

「・・・・・ほっとけばいい・・・というのは無関心すぎるか」

そう言うと、提督と呼ばれた男は椅子から立ち上がった。

「出港準備をするぞ、それと・・・・外の連中にも伝書カモメを飛ばしておけ」

「了解しました」

男はそう言うと、桟橋を目指して歩き始めた・・・・・

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posted by ラドリック at 20:31| Comment(3) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月17日

海賊の集まる島

§1§



「Band of lightとの距離500!砲弾装填完了しました!すでにpip船長の船は砲撃を開始しています!」

副官のロシェの言葉にレヴィローズは頷くと、Band of lightの方を見ながら言葉を放った。

「1番から順番に発射して!但し、絶対にBand of lightには当てないこと!

レヴィローズの命令をロシェが復唱する。砲術長の号令とともに、無数の砲弾がBand of lightに向かって放たれた。

しかし、レヴィローズが厳命したとおり、砲弾はBand of lightの左右に着弾するが、派手な水柱を上げるばかりで肝心の船体には命中しない。同じく並行しているpip船長の船から放たれた砲弾も命中していなかった。
・・・・そう、これは芝居・・・・ラドリックBand of lightが海賊島であるナッソーに潜入する為の芝居なのだ。

グレッグ男爵にナッソーの調査を依頼されたラドリックは、一緒にカリブに来ていたレヴィローズ、pip、養殖おりびあに協力を頼み、各国の哨戒艦隊から追われるイングランドの私掠船を装ってナッソーに潜入する事にした。そして、わざとナッソー周辺に張り巡らされた海賊達の哨戒網に引っかかるように、偽りの艦隊戦を行なっているのだった。その為、Band of lightは海賊船に偽装しており、一見普通の船には見えなかった。

「・・・・・うまく行くかしら・・・・・」

偽りの攻撃を加えながら、レヴィローズは呟いた。既にナッソーの哨戒網奥深くに入っているにもかかわらず、レヴィローズ達の艦隊を迎撃する艦隊も海賊船に偽装してるBand of lightを救援する艦隊も出てくる気配がなかった。その静けさが、レヴィローズの不安を駆り立てた。

「後方のおりびあ船長の船がBand of lightに砲撃しています!」

「何ですって!おりびあさんは周囲警戒の役で砲撃には参加しないはずよ!」

レヴィローズはそう言うと、養殖おりびあの船を見た。養殖おりびあのアラビアンガレーは、Band of lightに接近しながら砲撃を加えていた。一見それは、砲撃戦に業を煮やしたガレーが接近戦を仕掛けたようにも見えた。

「船長、おりびあ船長から伝書カモメです」

ロシェは、おりびあの所から放たれた伝書カモメの足についていた連絡文をレヴィローズに手渡した。レヴィローズはその連絡文を開く・・・そこには「偽装とわかる偽装は偽装にあらず。危険が増すだけ」と書かれていた。

「まさか・・・おりびあさん本気で砲撃を仕掛けるんじゃ・・・・」

レヴィローズがそう思った瞬間、激しい爆発音が聞こえた。レヴィローズがその爆発音の方を振り向くと、おりびあの船の砲撃がBand of lightの船腹に命中し、黒煙を上げていた。おりびあの船は更にBand of lightに肉迫する。

「おりびあさん!」

レヴィローズは叫んだ。そしてロシェの方を向くと、周囲を警戒するように命令を下す。そして・・・・

「船長!右前方の島影に艦影!ガレオン級が4隻・・・ようやく出てきたようです!」


ロシェの言葉にレヴィローズは頷くと、砲術長に合図の空砲を撃たせた。その合図にpip船長もおりびあ船長も、船を転回させて戦闘区域から離脱する構えを見せた。ラドリックのBand of lightは、消火作業を続けながら、前方の島に流れいく・・・


「ロシェ、私たちも戦闘区域を離脱します!そして、打ち合わせの通りに集合場所へ針路を!」

レヴィローズの命令をロシェが各所に伝える。そして軋むような音とともに、船は転回した。

「お兄様・・・ご無事で・・・・」

レヴィローズは後方を振り向きながらそう呟いた。その目線の先には、ナッソーの艦隊に囲まれるBand of lightの姿があった・・・




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2007年03月24日

開拓地へ・・・

§1§




「よし、グランドケイマンが見えたぞ!帆を畳め!総員投錨用意!」

副長のエドの声に船員達が慌ただしく投錨の用意をする。ロンドンを出航したBand of lightは、一路カリブ海にあるイングランド開拓地「グランドケイマン」を目指していた。そして今、目の前にその島影が見えたのである。

グランドケイマンは、クリストバル・コロンが発見した西インド諸島の一部であるケイマン諸島最大の島で、国際条約によりイングランドの開拓地として認められている。このような開拓地は他にも5つあり、それぞれ欧州諸国の開拓地として、新天地を目指す航海者の基地となっていた。

「おやっさん、投錨完了しました!」

「よし、ボートを降ろせ!グランドケイマンに上陸するぞ!」

副甲板長のロイがエドに報告すると、エドは次の指示を出した。グランドケイマンはBand of lightのような大きな船を係留する桟橋ができていないのだ。それも開拓地の開拓地である所以であった。

「ボートの準備できました!」

「船長、いつでも上陸できますぜ?」

ロイの再度の報告に、エドは傍らのラドリックに言った。その言葉にラドリックは頷きながら、舷側へと歩き出した。

「よし、今から上陸するぞ、ディック!ついて来い!エドはBand of lightを頼む!」

「アイ・サー!」

「まってお兄ちゃん、私も行く!」

「よ〜し、残った奴らは積荷のチェックだ!途中の嵐で傷んだものが無いか、船体のチェックもするぞ!」

ラドリックのあとをディックとソフィアが続く。それを見ながらエドは矢継ぎ早に指示を出していった・・・



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2007年03月21日

新たなる旅立ち

「ライザ・ミドルトン、そしてラドリック・ガーランドよ、よくぞこのイングランドを守ってくれましたね、この国に住む民にかわって礼を言います」

女王はそう言うと、頭を下げた。オポルト沖海戦でキングリューの率いる艦隊を撃破し、キングリューを拘束したラドリック達は、ロンドンに凱旋した。そして、負傷したエドやディック達を病院に収容させ、事後処理を航海長のレイモンドに任せると、ライザと共に女王に報告をする為に宮殿に向かったのだった。

「私は陛下の御意を受けてイングランド海軍の士官としての責務を果たしただけです。本当ならば、独断で行動を起こした時点で罪に服さねばならない所を、陛下のお計らいで、キングリューを拘束することができたのです」

「ライザの言うとおりです陛下、私達はイングランドの国民として当然の事をしたまでです。イングランドに生を受けた者として、祖国を守るのは当然の事です」

ライザとラドリックは女王の前に跪きながらそう答えた。

「しかし、貴方達が身を挺してキングリューを撃破してくれなければ、このロンドンは火の海となっていたことでしょう。私はこの国の王として、貴方達の功に報いる義務があります」


女王はそういうと、横に控えるサセックス伯に視線を向けた。その視線を受けたサセックス伯は一歩前に出ると、手にした羊皮紙を開いた。

「ライザ・ミドルトン、ラドリック・ガーランドの両名を本日を持って爵位を一つ進める事とする。それと、今回の海戦にかかった費用と報奨金を国の国庫より下賜する事とする。それと・・・・」

サセックス伯はライザの方を向くと、もう一つの羊皮紙を開いた。

「ライザ・ミドルトンは本日付けでウィリアム・ミドルトンの艦隊より異動を命じる、異動先は王立護衛艦隊・・・そこで、オットー卿の指揮下に入り、分艦隊を率いる事」

その言葉にライザが顔を上げる。

「陛下・・・・それは・・・」

「キングリューは撃破されたものの、我がイングランドは各地に敵を抱えています。今は一人でも優秀な指揮官を育てる必要があるのです・・・ライザよ、貴方にはこのイングランドを守る盾となって欲しいのです」

「陛下・・・・・」

「ウィリアム卿には既に了解を取っています。ライザよ、引き受けてくれますね?」

「私のような者に勿体無いお言葉・・・・このライザ・ミドルトン、命をかけて陛下のご期待にお答えいたします!」

女王の言葉にライザは目に涙を浮かべながら言葉を返した。女王は満足そうに頷くと、ラドリックの方を向いた。

「ラドリックよ、私は貴方にも王立護衛艦隊の分艦隊を率いてもらいたいと最初は思っていました。しかし、貴方はそれを望まないでしょう・・・・そこで、貴方には別の役目を与えます」

女王がそう言うと、サセックス伯が女王の言葉を受け継いだ。

「ラドリック・ガーランドよ、女王陛下の名において、貴官の軍務を解く。そして、新たに新大陸の調査を命じる!」

その言葉にラドリックは驚き、顔を上げて女王を見た。女王は微笑みながら頷く。

「なお、大海戦の参加も自由とする。ラドリック・・・・陛下のご温情に感謝するのだな、総司令官である私としては認めるわけにはいかんのだが・・・・」

「サセックス伯」

サセックス伯が更に言い募ろうとするのを制すると、女王は言葉を続けた。

「ラドリックよ、新大陸の調査は我がイングランドの命運をかける事業です。他の海洋先進国や新興国も新大陸の利権を狙っているでしょう・・・特にイスパニアは新大陸にもっとも近いといわれています。危険も伴うでしょう・・・だから貴方に命じるのです」

「陛下・・・・」

「恐らくこの調査は新大陸にとどまる事なく、インドの東方にある様々な海にも繋がる事でしょう。その調査には熟練の航海者である貴方が適任だと思うのです。やってくれますね?」

「御意にございます陛下、このラドリック・ガーランド、陛下のご期待に副えるよう、身命を賭して任務に当たらせていただきます」

女王の言葉にラドリックは深く頭を下げると、力強い口調で答えた。

「ラドリックよ・・・・十分休養を取り、準備を整えたなら出航しなさい、そして、新天地に羽ばたくのです」

「ありがとうございます陛下・・・・」

ラドリックは溢れる感情を抑えながら女王に答えた。ラドリックの跪く緋色の毛氈に、ラドリックの流した涙が落ちて染みを作った・・・・




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posted by ラドリック at 20:20| Comment(5) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月17日

死闘 §後編§

§1§


「エド・・・・・嘘だろ・・・・・エドォ!!!」

硝煙と静寂が包む船上で、ラドリックは物言わぬエドを抱きしめ叫んだ。熱い涙がとめどもなく流れ出る・・・・・

「ふん・・・・自分の仕える船長を我が身を挺して護った悲劇の副官・・・・と、言った所か・・・・無駄な事を」

「・・・・・・」

「折角副官が護ったお前達の命も、あともう少しで消える・・・・結局はほんの数分生き延びただけだったな・・・・フフフフフ・・・・ハーハッハッハ!」

「キングリュー!貴方という男は!」

エドを抱きしめたままのラドリックとその横に居るライザを見ながら、キングリューは嘲笑った。その言葉に激昂するライザ・・・・その時、ライザの肩をラドリックの手が掴んだ。

「・・・・・ライザ・・・・エドを頼む・・・・」

「・・・・ラドリック・・・・?」

振り返ったライザの瞳に移るラドリックの表情は虚ろだった。その瞳には何も映していない・・・・・ラドリックはエドを甲板に横たえると、無造作に立ち上がった。そして、腰に吊るした宝剣フラガラッハを抜き放つ。

「・・・・・・・・・・キングリュー・・・・・・・貴様だけは絶対に・・・・・」

「何か言ったか小僧?」

「貴様だけは・・・・貴様だけは絶対に許さん!俺と共に地獄に落ちてもらうぞ!」

「ラドリック!行ってはだめ!」

ラドリックはそう叫ぶとフラガラッハの鞘を投げ捨てた。そして、両手でフラガラッハを下段に構えると、船尾楼の壇上に居るキングリューに向けて走り出した。止めようとしたライザの手はラドリックには届かない・・・・・

「うおぉぉぉぉぉ!!」

走りながら雄叫びを上げるラドリック・・・・その目には狂気の炎が燃え上がっていた・・・・・



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posted by ラドリック at 13:58| Comment(5) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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