2006年04月03日

マルセイユの情熱(番外編)

春のうららかな風がマルセイユにそよぐ午後・・・・マルセイユ西教会の中は季節に似合わない熱狂の渦に飲み込まれていた。

「・・・・・これで最後だ・・・・!」


軍人風の男はそう言い放つと、拳を強く握り締めた。自分のすべての力をその拳に込めるように・・・・

「ここまで来た以上、負けるわけには行かないわ!」

少女は男をしっかりと見据えた。その瞳に恐怖の色は無い・・・・あるのは誇りと矜持と強い意思のみ。


二人は教会の祭壇を挟んで対峙した。教会に揃った大勢の人々はこれから起こるであろう二人の戦いに思いを馳せる・・・・そして教会内を静寂が支配したその時、第三の男が叫んだ・・・・・


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2006年03月17日

逃走劇

「航海長・・・どうやら狙われてるらしいぜ」

舵輪を握っているレイモンドの横で、ディックは船尾方面を見ながらそう言った。レイモンドが黙ってディックの見ている方向を見ると、同型の大型ガレーが二隻、距離を置いて航行していた。

「よりによってこんな時に・・・・船長もおやっさんも乗ってないっていうのに・・・・」

彼らを乗せたアラビアンガレーHMS Raging dragonは、黒海をアテネに向けて航行している。ラドリックはエドやソフィアと共に所用でアテネにおり、航海長であるレイモンドが船長代理として航行の指揮を取っていた。

「あの艦型から推測するとオスマンの私掠艦隊か・・・・厄介だな・・・」

レイモンドはそう呟いた。その言葉にディックも頷く。

「だがどういうつもりかね?確かに今のRaging dragonは非武装だが、最大船速で漕げば大型ガレーの一隻や二隻、楽に振り切れるんだぜ?相手もそれはわかってるはずだが・・・・・」

と、ディックが言うとほぼ同時に、メインマストに登っていたロイが叫んだ。

「前方に敵影!!艦型は重ガレー・・・・オスマン私掠艦隊の旗艦の模様!!」


「・・・・だ、そうだ」

レイモンドがディックに肩をすくめてみせる。

「ちっくしょう!後ろの大型ガレーは追い込み役か!どうする航海長!」

「どうするといったってこっちは非武装、しかも船長も副長も不在だ。ムスリム海兵隊の相手は流石にお前さんだけじゃきついだろ。今の俺たちの状態は、猟犬に追い込まれる哀れな獲物と言うわけさ。このまま行けば間違いなく拿捕されるな」

「えらく落ち着いてるじゃないか航海長!じゃあどうするってんだ!」

一向に慌てる様子のないレイモンドに苛立つディック。今にも掴み掛かってきそうなディックを見ながら、レイモンドは言葉を続ける。

「見逃してくれなくても俺達はアテネに帰らにゃならん。船長達に会うためにも・・・そうだろ?」

「・・・・ああ、そうだ」

レイモンドの言葉に頷くディック。

「じゃあ、ここは何とか隙を見出して、この包囲網を突破するしかないだろう・・・・ディック、全員を戦闘配置につかせるんだ!」

「了解だ航海長、久しぶりにお手並み拝見と行こうか!」

ディックはそういうと、周囲に聞こえるように叫んだ。

「総員戦闘配置!ハンモック降ろせ!!」



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2006年02月15日

続・似非軍人の憂鬱(エド)

どうもお久しぶりです、エドでさぁ。


あのボルドー沖の模擬戦から数ヶ月・・・・あっし達は戦闘とは無縁な生活を送ってやす。

Julian卿との戦いからこっちうちのぼっちゃ・・・いや、船長は、地中海のあちこちを駆けずり回って冒険者ギルドの依頼をこなしてやす。

本来戦闘艦であるRaging dragonもモーガンの親方に頼んで移動仕様にしちまったんでさ。

船尾楼は取り外すし、船員も最低限、大砲や装甲もまったく装備しない状態にしちまって、ディックなんか「俺の仕事がなくなっちまった・・・・」と嘆く始末・・・・同じく出番のないエルウッドは、船長に許可を取って陸に上がっちまったし・・・・・え?ロイの野郎ですかい?あいつは思うところがあって船長に頭を下げて、地理学の勉強をさせてもらってるようですぜ?

この間もベルゲンがイスパニアの無敵艦隊に襲われたんでやすが、王室海軍からの参戦依頼の手紙も、船長は封も切らずに捨てちまったんですよ。風の噂じゃサセックス伯が頭から湯気出して怒ってるって話なんだが・・・・・うちの船長は何処吹く風でせっせと冒険をこなしてやす。


Julian卿に負けたときには「また当分落ち込むのかねぇ・・・」と思ってたんだが、数時間船長室にこもったあと、急に冒険に出るぞって言ってさっさとボルドーを出航してしまった(勿論、途中でリスボンのドックに入って船体を完全に修理はしたんだが)んで、あっしは「おや?負けたのがショックじゃねえのか?ぼっちゃんも大人になったもんだ」と感心してたんだが・・・どうもそうでもないようなんでさ。


時々模擬戦をしてる海域を通過したりする時に、船長の目が自然と模擬戦を行ってる船の方に向いてるんでさ。表情にはださねぇが、その厳しい視線を見ると、やはり似非でも軍人と呼ばれる身分になった以上、戦いとは縁が切れないのを自覚してるんじゃねえかとあっしは思ってるんですがね・・・・

まあ、当分は冒険を続けるようだし、軍人に復帰できるかどうかもまだわからないんだが・・・・あっしは船長がこのまま燻るとは思えないんですがねぇ・・・


まあ、あっしはどんな事があっても船長についていくだけでさ。それがあっしの役目だと思ってやすし、先代に頼まれた事ですしね。第一、船長はまだまだ半人前だ、あっしがついていてやらねぇと・・・・・・・なんだって?本音を言ってねぇって?・・・・・・そんなこと恥ずかしくて言えるかってんだ(照


(船長と・・・ぼっちゃんと航海するのが楽しくてたまらないなんて・・・・口が裂けても言えねぇよ・・・)

posted by ラドリック at 20:38| Comment(7) | TrackBack(0) | 航海士達の日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月27日

戦士達の邂逅 §後編§

「エド!ディック!!Julian卿は俺が抑えた!一気に船内を制圧しろ!!」


剣撃の音と怒号が響くSea CentipedeUの甲板上で、ラドリックはエド達に聞こえるように声を張り上げた。

「了解でさぁ!第二斬り込み隊は俺に続け!」

「第一斬り込み隊は俺と一緒だ、一気に船内を制圧するぞ!!」

ラドリックの声にエドとディックが反応し、即座に行動を開始する。そして、静寂が甲板を支配した。

「まさかラドリック卿自身が囮とは・・・・・これはしてやられましたね・・・・」

端正な顔を歪めながら必死にラヴュリスを押し返そうとするJulianを見ながら、ラドリックはラヴュリスに力を込める。

「本来なら貴方との一騎打ちで決着をつけたかったんだが、陸上ならともかく船上ではそうも行きませんからね」

「・・・・そうですか・・・・ラドリック卿は何でも己の力で解決しないと気がすまない性分だと思っていましたが・・・・・認識を改めないといけませんね」

Julianはそう言うと、甲板に膝をつきながらシュパイツァーサーベルに力を込めた。ラヴュリスとシュパイツァーサーベルが擦れ合い、ギリギリと音を立てる。

「Julian卿、いつもならそうなんですよ、でも今回は仲間達の力を借りないと貴方には勝てないと思ったんです。もう少し・・・・船が制圧できるまで付き合っていただきますよ!」

そう言うと、ラドリックは更に力を込めようとした。しかしその時、Julianから意外な言葉を聞く。

「・・・・・・さあ・・・・それはどうでしょう?何事も最後までわからないものですよ?私も部下達を信じてますからね・・・」

「な・・何!?」

Julianの言葉が終わるか終わらないかと同時に、静寂に包まれていた甲板が再び剣撃の響きと怒号に包まれた。




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posted by ラドリック at 21:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月22日

戦士達の邂逅 §中篇§

「お兄様・・・・気をつけて」

併走する船からレヴィローズがラドリックに声をかけた。

「レヴィさん御心配なく。では」

ラドリックはレヴィーローズに敬礼を返す。それと同時に併走していたレヴィローズの船がRaging dragonを離れていく。

「ギム、ライル卿からの合図はまだか?」

ラドリックは振り向くと、ギムの方を見た。

「まだのようですが・・・・・いや、信号が来ました!」

ギムの声にその場に居る全員に緊張が走る。

「よし、全員第一種戦闘配備!合図の空砲があり次第、Sea CentipedeUとの戦闘に移る!」

「アイ・サー!」

ラドリックの指令と同時に全員が部署に散る。そして数分後・・・・轟音を合図として、戦闘は始まった。




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posted by ラドリック at 23:12| Comment(4) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月17日

戦士達の邂逅 §幕間§

「これで模擬戦大会を終了します。皆さんありがとう!」

ボルドーの教会にスーザ嬢の声が響き渡る。そして拍手が巻き起こり、模擬戦大会は盛況のうちに幕を閉じた。

俺はJulian卿の方に歩み寄ると、Julian卿に声をかけた。


「Julian卿・・・・ランク2の準優勝おめでとうございます」

「ありがとうございますラドリック卿、たまたま運がよかっただけですよ」

俺の声に振り向いたJulian卿がそう答える。パイレーツコートを隙無く着込んだ姿は、歴戦の軍人の風格を漂わせている。

「Julian卿・・・・いつかの約束を覚えていますか?」

「約束・・・・・?」

「そう、ストックホルムの酒場での約束ですよ」

「ああ、あの時の・・・・・」

Julian卿はそう呟くと、俺の顔を正面から見据えた。穏やかだった眼光が鋭さを帯びる。

「お互い船の修理があるでしょうから、3時間後でよろしいですか?」

「承知」

俺は短く答えると、Julian卿に背中を向けてボルドーの教会の出口へと向かった。胸に消える事の無い炎を燃やして・・・・・

(やっとあの時の約束が果たせる・・・・・・)


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posted by ラドリック at 23:26| Comment(5) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月09日

戦士達の邂逅 §前編§

「エルウッド!ライル卿の『ガルシス Ω RC』との距離が400になったら斉射三連!」

「ヤー!」

「レイモンド!斉射後に回避運動10秒だ、いいな!」

「アイ・サー!」


ボルドー沖にラドリック達の声が響く。ラドリック達は商会メンバーのスーザ嬢が主催を務める模擬戦に出ていた。ランク2というカテゴリに出場したラドリック達は、目の前の船・・・・ライル卿の指揮する商用大型キャラック『ガルシス Ω RC』と死闘を繰り広げていた。

模擬戦とはいえ、使うのは実弾である。乗組員達の表情に緊張が見て取れた。


「ガルシス Ω RCとの距離が400を切りました!」

「よし、こちらの大砲の威力を思いしらせてやれ!ファイエル!!」

測量担当の下士官の報告を受け、エルウッドがドイツ語で号令をかける。間髪をおかずに各砲門からガルシス Ω RCに向けて、轟音と共に砲弾が飛ぶ。

それと同時に、レイモンドは舵を切った。『Raging dragon』の船体が大きく弧を描いて旋回する。

「着弾を確認!メインマストが損傷した模様です!」

望遠鏡でガルシス Ω RCを見ていたロイがラドリックに報告する。ラドリックはその報告に頷くと、声を上げた。

「油断するなよ、すぐに敵の砲撃が来るぞ!!」





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posted by ラドリック at 21:47| Comment(6) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月02日

偉業の先駆者(ラドリック)

「・・・・?何だお前達は?」

俺はそういうと、前にいる男達を見た。

アテネのギルドでアレクサンドロス大王の父、フィリッポス2世の残したものについての調査を受けた俺とギムは、サロニカの奥地、マケドニア地方にある古代遺跡、ヴェルギナに来ていた。

そしてヴェルギナ遺跡の内部でフィリッポス2世のものと思われる莫大な副葬品を発見した俺は、その一部を持って遺跡を出ようとしたんだが・・・・小一時間ほど遺跡の内部を調べて外に出てきた俺達を待っていたのは武器を持った男達だった。

恐らくこの辺を縄張りとする山賊の類だろうその男達は、手に武器を構えていた。

「何だとは御挨拶だな、ここは俺達の縄張りだ。勝手に入ってきたのはお前だぜ?」

首領格と思われる男が俺に話しかけてきた。

「それは悪かったな、今出て行くから勘弁してくれ」

そう言ってその男の横を通り過ぎようとした俺の前にかざされる剣・・・・一点の曇りの無い鋭利な刃に俺の顔が映る。

「おっと、待ってもらおうか。その財宝は置いて行ってもらおう」

「何故だ?これは俺達が発見した物だ。鍵の錠前は古かった・・・・あんた達がかけたものじゃないだろう?」

「そんなことは関係ない、縄張りにあるものは全て俺達の物だ。例え草木の一本でもな」

男はそういうとニヤリと笑った。

「そういうことか・・・・・ならば渡すのは断る」

「ほう?この数を相手に帰れると思ってるのか?」

「怪我をするのはそっちかも知れないぞ?」

「言ったな・・・・なら遠慮は要らんな、野郎ども!やっちまえ!!」

そして遺跡は戦いの場となった。


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posted by ラドリック at 19:58| Comment(4) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月13日

美術って冒険?(ソフィア)

「・・・・・ひま〜〜〜・・・・・」

私はそう呟くと、船の舷側から陸地の方を見た。ここはナイル川の中流の上陸地点。お兄ちゃんがギルドの依頼でギムと一緒に探索の為に上陸してからもう2日、私たちはお兄ちゃん達の帰りを待ってるの。

「ソフィア嬢ちゃん、そんなこと言ってもしょうがないじゃないですか。ぼっちゃんはソフィア嬢ちゃんを危険な目に会わせたく無いからギムと二人で行くって言ったんですぜ?」

同じく舷側から陸地を眺めていたエドがそう言った。確かに上陸地点には山賊や異民族が居て危険だって言うけど・・・・それでも私は待ってるだけって嫌だなぁ・・・

「だって・・・・お兄ちゃん最近冒険に夢中になって、交易もそっちのけで冒険ばっかりしてるんだもん。私何にもすることが無いじゃない」

私は舷側に頬杖をつきながら言った。

「まあそりゃそうですがね・・・・・でも依頼を受けて貰った報酬や見つけた財宝で、船員達の給料は賄えてますしねぇ・・・」

「確かにそうだけど・・・・でも私はつまんないなぁ・・・・・・あ!お兄ちゃんが帰ってきた!」

上陸地点の奥の方から歩み寄ってくるお兄ちゃん達に、私は手を振った。


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posted by ラドリック at 20:11| Comment(5) | TrackBack(0) | 航海士達の日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月29日

新しき翼


「これが商用ジーベックか・・・・・」

造船所のドックに悠然と浮かんでいる船を見上げて、ラドリックはそう呟いた。

鋳造修行を終えたラドリック達は、インド最大の都市カリカットに来ていた。
目的はふたつ・・・・インドの特産であるサファイヤやルビー、胡椒等の交易品を買い付けることと、新しい船、商用ジーベックを受け取る事だった。

先のカナリア沖の逃走劇で交易船である商用サムブーク「HMS Merchant road」の受けたダメージは大きく、修理を行っても長期の使用に耐えられないと造船技師であるモーガンは判断した。その為、カリカットに新しい船を注文に来たのだった。


ジーベック

インド地方で良く見られる縦帆の帆船「サムブーク」の上位に位置する帆船で、その移動力と積載能力は目を見張るものがある。特に商用ジーベックは積載量こそガレオンなどの帆船に一歩譲るものの、帆を縦帆や横帆に換装する事によって、向かい風でも移動能力を損なわれない。その分値段も張るが、ラドリック達は何とか資金を用意したのだった。


「これが俺達の船に・・・・」

ラドリックはジーベックを見上げながらそう呟いた。

「船長、向こうの造船技師とは話をつけてきた、船倉を最大限増やしてもらうようにしたぞ」

その声の方にラドリックが振り向くと、そこにはモーガンが立っていた。

「ああ、すいません工房長・・・・で、Merchant roadはどうなりますか?」

「Merchant roadはこっちで引き取ってくれるらしい・・・・と言っても、外洋にはもう出れんからな・・・・最悪の場合は解体になるかもしれんな」

その言葉を聞いたラドリックの顔に苦渋の表情が浮かぶ・・・

「あの時・・・・ガレーを防ぐ為にMerchant roadを盾に使わなければ良かったんでしょうか」

「いや、わしはあの時の船長の判断は間違ってないと思っている。それに交易を手広くやるためには、いずれ新しい船に乗り換えなければならん。Merchant roadは頑張ってくれたよ船長」

モーガンはそう言うと、ラドリックの肩を叩いて造船所に戻っていった。




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posted by ラドリック at 20:04| Comment(2) | TrackBack(0) | ラドリックの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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